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(2003年12月9日付)
ブッシュ大統領による突然のバグダッド訪問は、通常であれば静かなはずの感謝祭当日のニュース番組を賑わせた。セキュリティー(保安)上の懸念から計画は完全に極秘裏に進められ、ホワイトハウス詰めの記者たちには大統領宅での感謝祭の偽のディナーメニューが伝えられるほどの念の入れようだった。
大統領のお忍び訪問に同行することが許された記者は13人で、勤め先や家族には秘密にすること、大統領がバグダッドを発つまで記事を送信しないことを事前に約束させられたという。007シリーズの著者である「イアン・フレミングの小説の1シーン」のようだ(ロサンゼルス・タイムズ紙)と形容された隠密行動は、2001年暮れにラムズフェルド国防長官が通信社電と同時に華々しくアフガニスタン入りしたのとは好対照であった。
記者が軍事行動の詳細を知り得る状況にいながら明かさないことは常だが、大統領の海外訪問を秘密扱いにすることは珍しい。ワシントン・ポスト紙のハワード・カーツ記者はテレビ局、Foxの記者の言を引用して、もしもっと多くの記者に訪問が知らされていたならば、訪問のニュースは「2秒ほどで外部に漏れただろう」と伝えている。ニュース記者というのは「存在する最大のゴシップ屋」であるからというのがその理由だ。
大半のジャーナリストは今回のホワイトハウスの対策をセキュリティー上いたしかたないと認めているものの、秘密主義の度が過ぎる、記者と編集者の信頼関係に支障をきたすと非難する向きもある。
また、クリントン政権時代のホワイトハウス報道官であったジョー・ロックハート氏はメディアに対する目くらまし作戦が行われたことにではなく、イラクに行って兵士を劇中の小道具のように扱うことをなんとも思わない大統領に疑問を感じるとコメントした(ワシントン・ポスト紙)。
しかし全般的には、再選に向けていかにものパフォーマンスではあるものの効果的であったというのが、ブッシュ大統領イラク訪問のメディア評であるようだ。
(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)