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米国ジャーナリズム時評

【33】

NYタイムズが信頼回復へ新制度

(2003年11月11日付)

 ニューヨーク・タイムズ紙は10月27日、「パブリック・エディター」と呼ばれるポジションを新設、12月1日付で雑誌編集者として豊富な経験を持つダニエル・オクレント氏が就任すると発表した。

 これは一般にはプレス・オンブズマン、もしくは「読者代表」と呼ばれるプレスの自主監査役で、読者からの記事に対する不満や指摘に基づいて独自の調査を行う。今年5月に元記者による捏造記事の数々が明るみに出たタイムズ紙にとって、信頼回復に向けた第一歩といえる。

 これに先立ち同紙は掲載基準設定や記者のトレーニングを実施する「スタンダーズ(基準)・エディター」という役職を設けた。主に読者との連絡役を務め、すでに発表された記事に対する監視役を務める前者と、日々の紙面作成と倫理基準設定に携わり、記者への指導を通じて今後発表される記事の質を高めようと試みる後者が協力体制を敷く。

 米国では1400以上の新聞が発行されているが、その中でオンブズマンを持つ新聞は40紙以下である。そうした現状でタイムズ紙が同職新設を決定したのは大きな前進だが、いくつかの懸念も残される。

 まず一つには、同紙のパブリック・エディター職は1年の試用期間の後に再検討されることになっており、その後は廃止される恐れもある。

 二つ目には同紙では編集主幹の監督下におかれているが、編集室の外部者としての立場から報道の公正さと正確性に目を光らせなければならない立場にある同職は編集プロセスや記者からの圧力から自由であるべきで、発行主の直接監督下に置かれてしかるべきである。

 三つ目には読者への状況報告であるコラム執筆は特別な場合のみに限られ定期掲載の予定はないというが、読者との双方向コミュニケーションがそれで成り立つのかどうか疑念が残る。タイムズ紙の新しい動きが実効的な意味を持つのか、米新聞界の注目が集まっている。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)