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米国ジャーナリズム時評

【26】

フセイン元大統領の息子2人の死

(2003年7月29日付)

 7月22日、イラク駐留米軍はイラク北部の都市、モスルで、フセイン元大統領の子息、ウダイ氏とクサイ氏の隠れ家を急襲、2人を含む4人を殺害したと発表した。残党勢力からのイラク駐留米軍への襲撃による米軍の死傷者が日に日に増加、米国内のブッシュ政権支持率が低下しつつある中で迎えた重大局面は、全米メディアでトップニュースとして伝えられた。

 初報では襲撃の模様と貴重な情報をもたらした情報提供者の詮索に各メディアの報道は終始した。情報提供者は隠れ家の保有者であるナワフ・アル・ザイダン氏である可能性が高いと示唆したのは、23日付のニューヨーク・タイムズ紙とUSAトゥデイ紙である。

 NYタイムズ紙によると、ザイダン氏は殺害された2人の息子とビジネス関係にあり、フセイン大統領の遠縁の従兄弟にあたるとされる半面、昨年10月には同大統領の親戚を名乗ることを禁じたイラクの法律に違反した廉で投獄されており、ザイダン氏が復讐のために2人の息子の隠れ場所の情報提供をした可能性がある。

 一夜明けた24日の報道は、死亡したのが本当にウダイ、クサイ兄弟であったのかという点に集中した。テレビ各局では、米軍がイラク国民に2人の死亡を証明するために発表した死体の写真およびX線写真などが流されたが、損傷の多い死体の顔写真での判別は難しく、CNNの現地リポーターはウダイ氏とされる死体写真は同時に殺害された側近ではないかと言うイラク情報筋の話を伝えるなど、米軍の主張を強く裏打ちするには至らなかったようである。

 23日付のワシントン・ポスト紙では、4月7日にラムズフェルド長官が死亡を発表した「ケミカル・アリ」の異名をとるマジド元イラク国防相生存の可能性が指摘されていることに触れるなど、殺害の際のフセイン政権要人の身元確認が困難であることを窺わせた。

 また、カタールの放送局・アルジャジーラが米軍捕虜の死亡写真を放映した際には非人道的だとして激しく非難した米国が今回、2人の写真を発表したことで、新たな倫理論争も巻き起こりそうな気配である。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)