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(2003年6月10日付)
イラク侵攻の理由として挙げられてきた大量破壊兵器がいまだに見つからないことが米国社会では問題になり始めている。そんな中、米国の主要紙がイラク侵攻に向けた世論形成のために米政府および親米のイラク反体制派に利用されたのではないかという厳しい指摘も飛び出した。
問題の発端となったのは、4月21日付のニューヨーク・タイムズ紙1面トップを飾った、バイオテロの専門家として知られるジュディス・ミラー記者による記事。この記事中、ミラー氏は匿名の軍情報筋を通じたイラク人科学者の情報として、大量破壊兵器が米の侵攻直前になって廃棄されたことなどを報じた。
ミラー氏が独自に情報の真偽を検証していないこと、大本の情報源とされるイラク人科学者と話すらしていないこと、またミラー氏自身が記事の中で断りを述べているように、掲載の前に軍の検閲を許したという事実など、この記事にはいくつかの問題点が見受けられ、掲載直後からオンライン雑誌であるスレイト誌のジャック・シェイファー記者などが少数派ながら問題を指摘してきた。
続いて5月26日、ワシントン・ポスト紙のハワード・カーツ記者は、タイムズ紙の社内メールを入手して発覚した事実として、ミラー氏の情報源が、米国肝いりの反フセイン派、チャラビ・イラク国民会議代表であることを報道した。
しかも引用されたミラー氏とタイムズ紙のイラク支局長とのやりとりからは、大量破壊兵器に関する同紙のスクープの大半の匿名情報源が同氏であったことが読み取れる。タイムズ紙に限らず、米メディアが反フセイン勢力の意図的に流した情報を鵜呑みにして、情報源を明示することなく報道してきたかもしれない事実が明るみに出て、改めてメディアの責任が問われそうだ。
(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)