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米国ジャーナリズム時評

【18】

ヤンキース・松井選手の社交術

(2003年3月25日付)

 再び身近に迫るテロの恐怖に脅える中、ニューヨークに住む日本人にとって地元チームのヤンキース、松井秀喜選手の活躍は数少ない明るいニュースのひとつだ。辛口の記者が多い米国のスポーツ報道において、こと松井選手に関してはネガティブな評がみあたらない。オープン戦での活躍ぶりもさることながら、原因はやはりその人柄にあるようだ。

 ヤンキース主力選手の名前を引き合いにだして「バーニー・ウィリアムス選手の魅力と、ロビン・ベントゥーラ選手のリラックスした態度」で米国に馴染む努力をしていると報道したのは13日付のニューヨーク・タイムズ紙。150人以上の日本人記者に囲まれながらも、細部にわたる気配りを見せる松井選手に賛辞を隠さない。

 そのタイムズ紙の記者をさらに驚かせたのは、松井選手が11日にアメリカ人記者たちを招いて行った夕食会だ。日本人記者ばかりでなく、アメリカ人記者たちとも交流を、という松井選手の気配りで行われたこの会だが、プライベートから報道陣を締め出す大リーガーに慣れているアメリカの記者たちにとっては想像も及ばないことだったようだ。

 トーレ監督も「素晴らしい。非常にプロフェッショナルだし、チームメイトも彼のことが好きだ」(18日付AP電)と称賛し、そのワンマンぶりで知られるヤンキースのオーナー、ジョージ・スタインブレナー氏は、選手評はしないようにしていると言いながら特に松井選手の名前を挙げて、「選手として、人間として、大いに称賛されるべき」人物(15日付ニューヨーク・ポスト紙)とこれまた最高級の賛辞をおくった。

 長い経済停滞など、ここ数年、米国メディア内での日本のイメージには芳しいものがみあたらない。松井流社交術は久しぶりに米国に喜ばれる日本からの輸出品であるようだ。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)