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(2003年1月28日付)
ライアン・イリノイ州知事は任期終了を間近に控えた11日、同州の死刑囚167人を一括減刑するという大胆な措置を発表した。欧州をはじめとする国々では前知事の英断として大きな称賛を持って迎えられたようだが、米国内での反応は複雑なものとなった。
背景の一つには、当のライアン前知事をめぐる事情がある。前知事は州務長官時代の汚職事件で近々起訴されることがほぼ確実なため、再選に向けた立候補を断念した。再選に向けて民意におもねる必要がなかったために大胆な措置が可能となったわけだが、州知事がいわば強権発動により独断的に警察、司法が何年もかかって下した決定を覆すことが民主社会において妥当であるのかという問題は残された。
前知事の委託による死刑制度検討委員会の委員だったS・トゥロウ弁護士は17日付のニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、今回の決定がアメリカ人の法手続きに対する信頼性に及ぼす影響は計り知れないと訴えた。
しかし、DNA鑑定などにより誤審が続々と明るみにでる現状で、死刑制度の存続そのものを見直す必要があることに変わりはない。前知事は13日、CNN朝のニュース番組に出演し、自身で167すべての判例を個別に見直したことを強調した後で、イリノイ州では死刑判決の実に6割が後に誤審と判断されたことをあげ、これだけの誤審がある限り死刑という「取り返しのつかない過ち」を継続するべきではないという持論を述べた。
今回の措置をめぐる不安材料は、前知事の決定が国民の怒りを招いた部分が大きく、死刑制度をめぐる問題点の根幹から論議がむしろそらされてしまったところにあるといえよう。
(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)