【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2002 by The Seikyo Shimbun.



米国ジャーナリズム時評

【13】

でっち上げ? クローン人間誕生騒動

(2003年1月14日付)

 スイスに本拠地を置く新興宗教団体ラエリアンが昨年の暮れに発表したクローン赤ちゃん誕生のニュースは、いまだ教団側がDNA鑑定を実施しないことなどから、米メディア内では宣伝効果を狙ったでっちあげであろうという見方に落ち着いているが、このニュースはクローン技術利用をめぐる論議を再燃させることとなった。

 元来、クローン技術には2種類あるというのが一般的な見解だ。一つはクローン人間作製そのものを目指すもの、他方は治療目的のクローン技術利用である。医療・科学界からはこの二つは全く異なる性質のものであり、医療技術の進歩のためにアルツハイマー病、パーキンソン病など、難病の治癒に活路を見いだす可能性のあるクローン胚を用いた研究は禁止されるべきではないとの声も多く聞かれる。しかし、共和党の保守派や宗教団体からは、クローン技術利用を全面禁止するべきであるという意見もいまだ根強い。

 今期の米国議会では、一部共和党議員を中心とした全面禁止案と、超党派議員たちによる治療目的の技術利用のみを可とする二つの議案が提出され、争われる見通しだ。全面禁止案を支持する層は、人工妊娠中絶に反対する層と重なり、政治家にとっては大きな票田でもある。

 メディア上では、技術がまだ未熟で、生まれるクローン人間には障害がある可能性が高く、非倫理的であるという批判が大半を占める。しかし、5日付のニューヨーク・タイムズ紙は論説で、近い将来、健常なクローン人間の誕生に科学が成功し、未成熟な技術利用による危険性が排除できた場合にはどうするのかという疑問を投げかけた。技術の進歩も根底に見据えて議論をすすめ、米国内のみならず、国際的なルール作りを急ぐべき段階にきているように思われる。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)