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(2002年12月10日付)
11月27日、ブッシュ大統領は、昨年の同時多発テロ事件前後の情報管理問題を調査する独立調査委員会の設立を決定し、委員長にキッシンジャー元国務長官を任命した。この外交政策の重鎮の政界表舞台への復帰は、米メディア上で大きな話題をよんだ。
多くのメディアが指摘したのは、同氏が設立したコンサルティング会社、キッシンジャー・アソシエーツ社との利害衝突に対する懸念だ。
同社は多国籍企業に対して、各国の政治経済に関する助言を行うのみならず、外国政府要人へのコネクションを提供することで知られる。委員会の任務の性質上、外国政府を調査する必要もでてくるが、これは同社の顧客の利益に直接影響を及ぼしかねない。パートタイムで任務につくキッシンジャー氏には、会社を辞することも、顧客のリストを公表することも法的には義務付けられていないため、メディアはこぞって疑念を表明した。
1970年代、中東和平に尽力していたエジプトのサダト大統領が、キッシンジャー氏を「魔術師」と評したことがある。中東和平という、極めて困難な政治目標に向けて交渉が続けられる中、キッシンジャー氏の外交腕力は、まさに不可能を可能にする魔術師の技と映ったのだろう。
テロ事件調査委員会も魔術師の手を必要としている。調査委員会設立にこれほど時間がかかったのは、共和党も民主党も、自らのアラが白日の下にさらされることを恐れているからに他ならない。
中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、移民局と、いわば身内の不手際を調査・指摘することになる同委員会の任務は、期間13カ月、予算300万ドルという厳しい条件もあいまって困難を極める。
各部署の政府内部での関係や情勢を熟知した同氏が、問題に的確に迫ることをアメリカ国民は強く望んでいる。
(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)