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米国ジャーナリズム時評

【9】

反戦デモをめぐる主要紙の論調に思う

(2002年11月12日付)

 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、10月26日、ワシントンを中心として世界各地で行われた反戦デモは参加者数20万人(参画団体発表)を数え、ベトナム反戦運動以来、最大規模の反戦デモとなったという。

 このデモの後にワシントン・ポスト紙では、以前に著作「悪魔の詩」がイスラム教を冒涜したとしてイスラム世界で物議をかもした、作家のサルマン・ラシュディ氏による寄稿を掲載した。同氏は今後、反戦の動きが強まったとしても、イラクの政権交代の必要性は動かしがたいと強く主張しながらも、なぜ最近まで米国政権は海外から民主化運動を続けているイラクの民主主義勢力を無視してきたのかなど、米政権の一貫性に欠ける政策に対して数々の疑問を呈している。

 これ以外にもワシントン・ポスト紙のオンライン版では「イラクにまつわる論議」と題されたページがあり、今まで同紙に掲載された各界知識人によるイラク攻撃に対する賛否両論が、「テロとの戦い」「米国議会の役割」「戦争のコスト」など7項目に分けて紹介されている。

 全体としてはラシュディ氏のような保守的な意見が多いが、反戦派の声も反映されている。米国が対イラク先制攻撃にでれば、脅威を感じた他国は武器開発に、その開発力を持たない国や勢力はテロに走るだろうという民主党議員の寄稿や、民主主義社会で意思決定をする際に不可欠な「情報」が政府によって発表を差し止められている中、どうやって国民がイラク攻撃の是非を判断できるのかと問うた同紙論説委員によるコラムなど、読み応えのある議論も多い。

 世論がイラク攻撃に傾く中、米メディアがどこまでバランスのとれた報道で民主主義に不可欠な情報を届けてくれるのか、その真価が注目される。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)