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(2002年7月23日付)
独立記念日と前後して政教分離と愛国心の問題が米国社会をにわかに騒がせた。
事の発端はサンフランシスコの連邦控訴裁判所判決。米国の小学校では始業前に生徒が星条旗に向かって忠誠を誓う文言を唱えるのが慣わしになっているが、その文言の中に「神のもとに」という言葉が含まれているため、裁判所はこれが憲法に定められた政教分離原則に反するという判決を下した。
議会はこれに猛反発、判決の数時間後には上院で判決のやり直しを求める決議が圧倒的多数で採択されるという異例の事態となった。
大半のメディアの議論が常識的判断を欠いた判決という批判のみに集中するなかで、判決の是非から一歩離れて米国社会と神の関係を見据えた論説のいくつかが目をひいた。
そのひとつは、7月7日付ニューヨーク・タイムズ紙論説。貨幣の上や忠誠文言中で「神」という言葉が乱発されることで、その存在が惰性的かつ安っぽいものにおとしめられてしまう危険性を読者に喚起した。
ロサンゼルス・タイムズ紙もイギリスの歴史家、E・ギボンの言を引いて、宗教と政治という二つの権力を融合して社会統制のための道具にしようという政治家の目論見には注意せねばならず、政教分離原則が改めて確認されるべきであるとした論説を掲載した。
それぞれ愛国心と信教が融合されることの危険性を指摘し、政治に宗教が利用されることへの警鐘をならしたものといえる。日本人の目から見れば過剰反応とも見えるほどの熱気を帯びてメディアを連日にぎわせた論議は、物質主義一辺倒と批判されがちな米国社会における宗教と精神性の重みを改めて浮き彫りにした。
(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)