Current Directory is http://www.seikyo.org/【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2005 by The Seikyo Shimbun.



メディアのページ

成長する人と組織――人的資源の可能性

(2005年7月5日付)


サーバント・リーダーシップ論
経営者、指導者の本質は奉仕すること


 人は一人ではできないことを実現しようという「思い」で組織をつくる。そして、その思いに共感して人は組織に参加する。この思いは、組織の原点であるはずだが、いつの間にか、この思いを忘れて別のものに右往左往してしまう。

 そうならないためには、リーダーが思いをしっかりと見つめ、その実現のために行動する構成員を大事にして、その人たちに仕えていくことが重要となる。

 このことに関連して、今、「サーバント・リーダーシップ」がビジネスの世界で話題になっている。これはアメリカのロバート・グリーンリーフが提唱したもので、サーバント(召使い、奉仕者)とリーダー、二つの相対する言葉を並べた造語である。

 つまり、リードすることの本質はまず奉仕することであるとする、リーダーの心のあり方を説いた理念である。この考え方は全米で大きな反響をもって受け入れられ、様々な企業・団体で取り入れられている。

 アメリカの競争激化の航空業界で、1971年に新規参入を果たし、脅威の大成長を遂げているサウスウエスト航空もその一つである。湾岸戦争や9・11テロにより、ほとんどの航空会社が赤字に転落する中で、唯一、収益を伸ばし続け、2003年には月間国内便乗客数でトップになった。2003年末で31期連続黒字を達成している。さらに2004年、ノースウエスタン大学の研究所から、人間主義経営で、年間最優秀企業に認定されている。

 この会社については、サンディエゴ大学の教員を歴任しコンサルティング会社を経営するフライバーグ夫妻による詳細な実態研究に詳しい(邦訳『破天荒! サウスウエスト航空――驚愕の経営』日経BP社)。

 機長自らが機体の掃除をするという会社だが、他にサーバント・リーダーシップの実例として、従業員の貢献を顕彰する祝典の開催をあげたい。会社の思いを実現するために貢献し成功した社員をたたえ、皆でその喜びを分かち合うのである。正しいことを実行した人を顕彰することによって、会社の思いや価値観を見える形で全社員に示すものとして、通常の業務以上に重視している。

 2カ月に一度、会社の価値観を実践している10人くらいの従業員に「勝利者賞」が与えられる。さらに年次受賞パーティーで、最も羨望の的となっているのが「創立者賞」である。これは数年にわたって称賛に値する業績を示した人が対象となる。

 そして、同社のリーダーたちが最も力を入れるのが、「心の英雄賞」である。これは人目のつかない場所で、会社の成功に貢献している人に与えられるものである。陰の功労者を見つけるのは難しいが、全社をあげて、草の根を分けても探し出し顕彰するというものである。

 急成長には必ずそれを支えた人たちのグループがいる。忙しさにまぎれて、感謝することを決しておろそかにしてはならないという考え方だ。授賞式は本社のメーンロビーや飛行機の格納庫などで行われるが、授賞の瞬間まで名前は明かされない。そして受賞者は、この日のために特別に用意された飛行機の機体(最も大事な商売道具)に、受賞者の名前がペンキで書かれているのを見る。そして楽団の祝賀演奏が始まる。受賞の喜びはいかばかりであろうか。

 もう一つ、サーバント・リーダーシップで有名な成長企業の例をご紹介したい。米国の清掃業の大手企業であるサービスマスター社である。同社は病院や学校の清掃を請け負っているが、この会社が請け負うとその周りのコミュニティーまでが前向きで明るく変わるという伝説をもっている企業である。この企業の基本理念は、同社の最高経営責任者を務めたウィリアム・ポラード氏がまとめた本に詳しい(邦訳『企業のすべては人に始まる』ダイヤモンド社)。

 同社では、現場の清掃員の功労を認めてもらうために「プライド・デー」という日を設けている。同社がカーネーションを現場に贈り、院長や校長に依頼して、サービス員全員にカーネーションをつけてもらう日である。

 この時、ポラード氏はサービス員が涙を浮かべている姿を何度も見たという。

 無視される清掃員ではなく、血の通った人として見てくれたことに人間の尊厳を取り戻し感激するのだ。ポラード氏は、リーダーが最前線を歩いて、そこで頑張っている人に「ありがとう」とねぎらいの言葉をかける大切さを訴えている。

 成長する企業には、創立の思いを大事にし、最前線で貢献する構成員を称え、感謝し、さらなる成長のために奉仕するリーダーが必要である。

 (創価大学教授)

 くりやま・なおき 1960年、大阪市生まれ。創価大学大学院博士後期課程修了。ILO(国際労働機関)本部勤務、日本ILO協会月刊誌「世界の労働」編集長、ジュネーブ大学現代アジア研究所客員教授、ILO国際労働問題研究所訪問研究員を経て、創価大学経営学部教授。著書に『グローバリゼーションと「労働」に関する研究』など。