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メディア月評

連載コラム
「放送メディア月評」
創価大学教授・田村穣生

【7】



日テレ「議員の海外視察の実態」暴く
これまで本気で追及しなかった反省こそ

(2004年1月13日付)

 昨年末に放送された日本テレビの『報道特捜プロジェクト』で、地方議員の海外視察の実態を映像でとらえて紹介し、話題になった。

 とりあげられたのは11月下旬の東京都議会議員6人のミラノ視察と、11月中旬の埼玉県議会議員6人の東南アジア視察である(いずれも視察全体のうちの一部分)。

 東京都議会議員の視察目的は“産業活性化策”と“都市基盤整備”の調査で、ミラノは“路面電車の視察”であったが、実際には観光名所5カ所を回っただけ。

 また、埼玉県議会議員の場合は“産業”と“防災”の実情調査が目的であった。

 一行はまずベトナムに入ってその夜マッサージ店に繰り出し、次の都市で工場などを視察したあとカンボジアに入ってアンコールワットを視察。そのあとタイに移ってクラブ「かわいい」に行き、各議員は待機していた女性から一人ずつ選んで別室に消えた。クラブの女性を宿泊先のホテルに連れて帰った議員もいた。驚くというよりも怒り呆れるほかはない。

 これらの映像はいずれも隠しカメラで密着取材したものだが、議員の顔はボカシをかけ、ナレーションも憶測をまじえないで事実紹介にとどめるなど、節度をもった取材態度でなかなか良かったと思う。

 なお後日談として、これが放送された影響か、埼玉県で批判が高まり、当該議員が旅費を返還するなどの動きがあった。テレビ報道が政治を動かした一つの事例といってよいだろう。

 しかしこれは評価できるとして、テレビのいろいろな問題も見えてくる。

 まず旅費返還などの動きが出たのは、テレビの巨大な視聴者数を議員たちが恐れたためであって、ことの当否を考えて反省したというスジ論からではなさそうだということ、つまりテレビの強面部分が利いたということである。

 だからこれでテレビがいい気になってはおしまいで、本来の“社会正義”という理念的な役割を高めることを常に心がけなければなるまい。

 つぎに、議員の海外視察の問題は、はるか昔から問題になっていたにもかかわらず、なぜこれまで本気で追及してこなかったのかという点について、深刻な反省が必要である。これは今回成果をあげた日本テレビも例外ではないが、他のテレビ局はもっと厳しく批判されなければならない。“社会正義”とは常時振りかざすべき問題意識であったはずだ。

 三番目はテレビ編成の宿命的な問題点である。今回の日本テレビの報道は良かったが、この局は昨年視聴率調査世帯の買収事件を起こした。つまり社会正義を追求する報道部門と、低俗になっても視聴率を上げて金を稼ごうとする娯楽部門とが、同一のチャンネルに同居している。

 そして娯楽が大きなウェイトを占める。実態として、視聴者は主に娯楽を楽しみ、その流れで一部報道をみる。そのような条件の下にある報道は、どのように編成すればよいのか。これにはまだ誰も回答を出せない。むずかしいテーマだが、みんなで考えなければなるまい。


 たむら・みのる 1939年、高知県生まれ。東京大学文学部卒業。64年NHK入局、放送文化研究所主任研究員を経て92年より現職。早稲田大学非常勤講師、元日本マス・コミュニケーション学会理事・企画委員長。専門はマスコミ産業論、メディア史。編著に『メディアと情報のマトリックス』、共著に『テレビ史ハンドブック』がある。