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(2003年10月15日付)
10月のテレビ新番組がスタートした。番組の出来ばえを論じるには少し早すぎるので、番組の企画の面について書いてみたい。
最も注目されるドラマに関しては、新しい企画もあるが、いかにも型どおりのものが目立ち、またおなじみ路線やリメークものもかなり目につく。とくに『白い巨塔』が25年ぶりにドラマ化されるのにはいささか驚かされた。
それに対して、おしゃれな老人ホームを舞台にした『エ・アロール』が珍しく老人を中心に据えるという。ここ20年ほどテレビは若者迎合とともに若い女性への依存度がきわめて大きかったが、そろそろ高齢化社会を無視できなくなったことを、この企画が示しているようだ。
ただし、老人を中心に登場させても、若者の好むようなストーリー展開・人物造形・関係性にしてしまうようだと、これは実質的に「迎若・蔑老」路線になる。どのような脚本・演出になるか注目したい。
もう一点、今回のドラマにはマンガを原作とするものが少ない。ひところのテレビドラマはまさに“マンガ頼み”だった。データでいうと、産業規模5000億円のマンガ業界で作家数が4000人、これに対して2兆5000億円のテレビ界で脚本家は何百人程度のレベルにすぎないとみられる。
メディア企業におけるお金の配分の仕方にその企業の価値観が現れるという意味で、これはいろいろなことを示唆している。
もちろん最終生産物そのものを作るマンガ作家と、テレビ番組制作における脚本家のポジションではかなり違いがあるが、それにしても、テレビ局が脚本家を大切にしないために、創作力において産業規模5分の1のマンガ業界よりもはるかに劣ってしまったといわざるをえない。
そもそも番組の原作をマンガに依存すること自体が、かなり恥ずかしいことである。それだけに今回は、テレビ自身の創作力を示す好機といえよう。
一般論として、テレビ界のお金の配分は、テレビ局員の高給与、番組制作プロダクションへの制作費削減要求とプロダクション社員の劣悪な労働条件、そして脚本家や演出家への低額謝礼金など批判される点が少なくない。これらの面でも改善してほしいと思う。
ところで最近、若い女性のテレビ離れが進行しているという話をあちこちで聞く。日本経済新聞9月18日夕刊の記事によると、フジテレビ月曜夜9時台の「月9」といわれた若い女性向けラブ・ストーリーの視聴率が低迷しており、他の局でもそのタイプのドラマが軒並み不振だという。
「まず主演俳優を決めてからあとでストーリーをはめこむ」という作り方が通用しない、脚本が下手、プロデューサーが脚本家を生かせない、など作り手の責任論議がある一方で、若い女性のケータイ(携帯電話)やインターネットへの傾斜といった視聴行動の変化など、その背景の追及がなされている。
そして私があるテレビ局調査部門の人から直接聞いたところでも、今や若い女性はテレビのマンネリにうんざりしてテレビから離れつつあり、むしろ中年男性が家に帰ってからすることがないので仕方なくテレビをつけて眺めている、いまやテレビ視聴率を支えているのは中年男性らしい、という。
テレビはさまざまな面でこれまでのやりかたを根本から考え直す時がきているようだ。
たむら・みのる 1939年、高知県生まれ。東京大学文学部卒業。64年NHK入局、放送文化研究所主任研究員を経て92年より現職。早稲田大学非常勤講師、元日本マス・コミュニケーション学会理事・企画委員長。専門はマスコミ産業論、メディア史。編著に『メディアと情報のマトリックス』、共著に『テレビ史ハンドブック』がある。