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【グローバル社会は今 11=完】
加瀬みき


独り勝ち米国とどう付き合うか

日欧は負担分かち合う意思と実行力を

(2003年6月17日付)

 アメリカへの力の一極化を憂い、その影響を懸念する声は大きい。ソ連が崩壊し、アメリカがスーパー・パワーとなって既に12年であるが、同時多発テロ後のブッシュ政権の政策が、改めて一極化の問題に焦点を当てている。

 現米政権へは、国連軽視、武力依存、他国との協議不足、国際法無視といった批判が浴びせられる。完全に他国を蔑ろにしたかのようなラムズフェルド国防長官の発言や、敵か味方かと迫るブッシュ大統領の演説、そして横暴ともいえるイラク戦争への突入に対し、戦争に反対した独仏ばかりでなく、英国などでも激しい憤りの声が聞こえる。

 しかし、国連と欧州はバルカン紛争解決を試みたが、20万人以上の死者を出して、なお紛争は拡大し、アメリカの強硬な平和工作でやっと収まった。同じくコソボ戦争では当初、躊躇したアメリカが介入し、地上軍をも厭わない意思を示した結果、ミロシェビッチ大統領側は降伏した。

 イラク戦争後イスラエル・パレスチナ平和交渉はようやく本格化し、アラブ諸国もアメリカの後押しをしている。こういった実績から目を背けることもできない。度重なるインド・パキスタンの衝突、あるいは北朝鮮問題も、アメリカの介入なくしては解決しないというのは、認めざるをえないところだろう。

 問題は、こうした成果を、力の一極化と切り離せない一国主義なくしていかに挙げられるか、ということと、アメリカ帝国の時代と論じられるものの、本来、孤立主義のアメリカが、持続的に世界に関与しない、ということではないだろうか。

 大きな問題ほど、アメリカが行動を起こさない限り、その解決に向け前進しないのが、今の世界の現状である。ではアメリカにリードを取らせつつ、他国が時には制御し、時には方向調整させることができるのであろうか。

 その枠組みとして国連が機能していないのは明らかである。アメリカが国連軽視の態度を取るからだけでなく、国連は加盟国の意思の範囲でしか機能し得ず、またその意思を遂行させる手段ももたない。スレブレニッツアでの7000人の大量虐殺を国連派遣兵士は傍観するしかなかったことを忘れてはならない。

 では、フランスのシラク大統領の唱える、アメリカのカウンターバランスとなるパワーが存在しえるのだろうか。EUが欧州内の問題ですら自ら解決しえないのは、この10年で証明されている。日本も、内を整えることに集中している欧州(英国は例外と言える)も、内向きの自己中心衰退国家であり、広く世界の問題にかかわる意思も実力もない。

 アメリカの独り勝ちは、他が弱くなった結果でもある。1980年代、米金融界は、日本がアメリカを経済的に「占領する」と真剣に恐れていた。今不景気といえどもアメリカ経済がトップにあるのは、日本や欧州経済が沈んだからである。

 同じく、安全保障の分野においても、アメリカの3000億ドル(GDP比2・9%)に対し、欧州17カ国(北大西洋条約機構加盟国)で、1300億ドル(GDP比平均2・14%)の防衛予算では、差は開くばかりである。

 さらにオックスフォード大学のニール・ファーガソン教授の分析によれば、欧州はプロテスタンティズムに根ざした勤勉な労働意欲も無くしている。労働時間は、ドイツでもアメリカより22%少なく、一方、欧州各国がストライキにより失う労働日数はアメリカよりはるかに多い。

 アメリカが一国独裁で世界を運営するのは、多数の問題を生むばかりでなく、資源や知恵の限界という面からも不可能である。特に国造りとなると必要な持続性を持ち合わせていない。世界の問題とかかわることを余儀なくされるアメリカと、日欧の先進国が、どこまで負担を分かち合う意思と実行力があるのか、この問いへの回答こそが、アメリカの一国主義に対する回答となる。

 (アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員)