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【グローバル社会は今 9】
加瀬みき


ネオ・コン(新保守派)その影響力

ブッシュ政権に決定的な存在感

(2003年4月15日付)

 アメリカの外交政策の機軸となるイデオロギーの新たな流れが注目されている。これまでは、ほぼリベラルとコンサーバティブ(保守派)と分けられてきたが、ここに来てネオ・コンサーバティブ(ネオ・コン=いわば新保守派)と呼ばれる一派が、現ブッシュ政権の外交政策の行方を左右する大きな力を発揮している。

 彼らの推奨する政策は、イラク政策や先制攻撃を含めた国家防衛戦略ばかりでなく、いわばアメリカの世界とのかかわりを定義している。

 政権の中枢に席を占めるネオ・コンの重鎮としては、ポール・ウルフォウィッツ国防副長官、チェイニー副大統領の首席補佐官であるルイス・リビー、数週間前に辞任するまでは国防政策委員会委員長であったリチャード・パールが挙げられる。

 アメリカの政策形成の特徴としてシンクタンクの影響力があげられるが、マイケル・レディーン、ロバート・ケーガン、デービッド・フラムなどがその代表であろう。彼らの政策は、民主党はもちろん、これまでの共和党の政策とも違う反面、両方の特徴を兼ね合わせているとも言える。

 ネオ・コンは、従来の共和党の流れのごとく、力による政策を良しとする。しかし、ニクソン大統領、キッシンジャー補佐官のソ連や中国に対するデタント政策やバランス・オブ・パワー(勢力均衡)政策は嫌い、アメリカの力を全面的に前向きに評価するところから、レーガン大統領の軍事力強化により敵を追い詰めた、力の優位性に基づいた政策を支持する。

 一方、アメリカの力を信じ、そこに重点を置くあまりに、他国の貢献、他国との協力はどうしてもないがしろになる。このあたりは、現大統領の父・ブッシュ41代大統領の方針とは大きな差がある。

 今回のイラク戦争を巡る同盟国、友好国、周辺国との関係の軋みと12年前の湾岸戦争時、アメリカが多くの国々を味方に付けるために行った努力と成果は、あまりにも対照的である。

 これは、親子大統領の経験や政策の違いばかりでなく、側近達の考え方の違いも如実に反映している。父の政権の多国間共同政策主義に対し、ネオ・コンの力を反映する現政権は、一国主義と言える。

 一方、ネオ・コンは、同時にリベラル思想の流れ、あるいはアメリカに古くから流れる宣教師的な流れもくんでいる。ブッシュ大統領(父)の国家安全保障特別補佐官であったスコウクロフトが先週ノーベル財団で行った講演で、ネオ・コンを、従来の共和党の流れを汲む「現実派」に対比して、「改革派」と表しているが、これは、ネオ・コンが世界を変えようとする姿勢を表現している。

 近代化から遅れた国々に自由や民主主義、資本主義をもたらすことを目的とするが、リベラル派が経済援助、教育などのいわば善意で同じ目的を達成しようとしたのに対し、ネオ・コンは、力を最善の手段とする。

 従来の保守派の政策は、力を目的としたが、ソ連との闘争以外にその力の活用目的はなかった。一方、リベラル派は、民主主義や繁栄を世界に広めるという立派な目的はあったものの、それを達成するためには、善意のみでは手段としてその有効性に限界があった。イラク政策、その戦争という手段と残虐な独裁者を倒し、地域に民主主義をもたらすという目的は、まさにこの二つの流れが合致した結果とも言える。

 ネオ・コンは、保守、リベラル、両方の流れを汲むだけに、両派ともネオ・コンを全面的には批判しにくい。また過去20年以上にわたる経験を蓄積した両派の政策インテリが今やネオ・コン派に集結していることからも、同一派が、当分現政権の政策に決定的な影響を与えると思われる。

 (アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員)