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【グローバル社会は今 7】
加瀬みき


米国はイラクに厳しく北朝鮮に甘い?

国際社会へ挑戦の理由と国連手続きに違いが

(2003年1月21日付)

 アメリカから核開発の証拠を突きつけられた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、その事実を認めてから3カ月が経つ。CIAの分析によれば、既に2個の核爆弾を持ち、使用済み核燃料を再処理すれば半年でさらに5〜6個の核爆弾を製造できる量のプルトニウムを抽出できるという。はたしてミサイルに適合するだけの核弾頭を縮小する技術を得ているかは不明であるが、核保有国と言うに足るだけの脅威になっている。

 一方、国連の安全保障理事会の決議に基づき、大量破壊兵器の査察を受けるイラクは、核保有の願望はあり、そのためにはあらゆる手段を尽くすと思われる。が、生物化学兵器使用の実績はあるものの、いまだ核は保有していないというのが、アメリカも含めたコンセンサス(了解事項)である。

 では、なぜ北朝鮮とは外交的手段で解決を図ろうとするのに対し、イラクには軍事手段を用いようとするのであろう。一見、危険度は北朝鮮の方が高いと思われるのにもかかわらず、なぜイラクへの軍事攻撃に対するクレディブル・スレット(実行が信頼できる脅迫)が、ここまでたかめられるのであろうか。そこには幾つかの理由がある。

 まず、そもそもイラクが12年前の湾岸戦争時代の国連安全保障理事会の決議に違反しているのに対し、北朝鮮には、そのように国際社会が制裁を下す根拠はない。

 国連決議にもさまざまな種類があるが、イラクに対する安保理決議は国連憲章第7章、つまり関係者の交渉による解決を求めるのではなく、国際法を犯したとされる側が国連によって課された義務を一方的に満たさなければならない。これを満たさない場合は、国連による強制行動が伴う。

 北朝鮮は少なくとも現時点ではこのような決議の対象とはなっておらず、IAEA(国際原子力機関)との間で署名した保障措置協定は、イラクの場合と違い査察官の自由行動を許すものではない。

 イラクは、北朝鮮とは違い核兵器をいまだ所有していないにもかかわらず、なぜ攻撃する必要があるか、という議論がある。しかし、逆に北朝鮮情勢において軍事的圧力をかけることの難しさを考えると、核を持つ前に攻撃する必要性も見えてくる。

 北朝鮮が実際、使用可能か否かは不明なるも核を持ち、日本や韓国に届くミサイルを大量に所有している現状では、軍事オプション(選択肢)は極めて狭められている。

 イラクが核を持ち、これを例えばクウェートに向けるという脅迫手段を取る前に先手を打つという考え方である。またサダム・フセインが実際に、それも自国民に対し生物化学兵器を使用したことも忘れてはならない。北朝鮮にはそのような実績はない。

 両国の国際社会への挑戦の理由も違う。イラクはいわば侵攻を目的としている。イラン・イラク戦争、湾岸戦争と戦争を起こしてきた当事者である。これに対し現状の北朝鮮は、国家と国民の生存の危機に瀕している。他国への侵攻が目的ではなく、食料や資源、そして自国の威厳を獲得するために藁をも掴むという心境であろう。北朝鮮が軍事問題と化す可能性は否定できない。もちろん外交、経済手段を蔑ろにするものではない。が、日本は軍事問題としても捉えておかなくてはならない。

 実際に国土を越えミサイルを飛ばされ、ましてや国民を拉致されている国家として、外交が単なる譲歩による宥和政策にならないため、また万一、北朝鮮が何かしらの攻撃的手段に出る場合を想定し、きちんと防衛のための戦略を練っておく必要がある。

 自国の防衛を責任をもって果たす周到な姿勢を見せることこそイラク問題への貢献にもなる。

(アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員)