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(2002年8月20日付)
イラク攻撃の可否および是非を巡る論争が一つの山場を迎えている。ブッシュ大統領はイラクの政権交代を求め、十分な危険がある場合は先制攻撃をも厭わないという強硬姿勢を示している。25万人規模の総攻撃から反体制派を利用した「アフガン型」攻撃まで少なくとも五つの軍事戦略が紙面を賑わし、国務、国防省共催でのイラクの反体制派との会談が実現している。
しかしここに来て強気であったホワイトハウスが、友好国・同盟国と協議をし、あらゆる選択肢を十分検討する、決して軽率な行動を取らない、といった柔軟な発言をするようになった。この裏には、共和党の有力議員をはじめ米議会から慎重な行動を求める声があがった他、同盟諸国やイラク周辺国の反対が予想外に執拗であることが原因と思われる。
ドイツのシュレーダー首相は、ドイツはアメリカの「冒険」に参加しないし金も出さないと豪語している。最も親密な同盟国である英国においてさえ、下院防衛委員会議長が攻撃を正当化するだけの十分な証拠が示されていないと発言、世論調査では参戦反対が52%にまで膨らんでいる。湾岸戦争時、攻撃の拠点基地を提供したサウジアラビアは強硬な反対姿勢を示している。
反対や懸念の裏にはイラクを巡る米政権の対策のまずさがある。まず先制攻撃の理由と証拠が明確でない。昨年9月の対米テロ攻撃とのかかわりであるならば、イラクとアルカイダとの繋がりを証明する必要がある。別の理由はイラクが所有する生物化学兵器、そして製造の可能性のある核兵器である。
フセイン大統領が自国民に化学兵器を使用したのは知られており、今後これらの兵器を使用する、あるいはテロリストに渡す可能性はある。しかしこれもイラクとテロリストとの連携を証明する必要がある。いずれもいまだなされていない。
次の問題点は軍事作戦である。25万の兵力の総攻撃は周辺諸国の協力なくしては行えない。「アフガン型」を採用するには反体制派への信頼はもう一歩薄い。少数部隊がバグダッドに乗り込み、内側から外へ崩す「インサイド・オウト」作戦が一番周辺諸国に依存しないが、危険度は一番高い。元来公表すべきでない軍事作戦がこれだけ漏れるのは、敵を混乱させる目的というよりは、政権内が攻略作戦で意見の一致を見ていないことを表している。
さらに問題を深めているのは、他国を必要としないという極端な同盟国排除主義である。穏健派のパウエル国務長官までが、同盟国の説得にあたるものの適わない場合はアメリカ一国ででも敵を討つと述べている。しかし超大国といえども一国でイラクを攻略することはできない。諜報活動から軍事作戦の実行、石油対策、イラクの民主化、周辺諸国の安定とあらゆる面で他国の協力が必須である。孤立化は成功をもたらさない。
同時にアメリカの政策に何らかの影響を与えるのであれば、政策が固まる前の今しかない。日本も湾岸戦争の二の舞にならないためにもテロリストの資金の流れ、あるいは隣国イランに関する情報の提供を活用しアメリカの政策議論の一角に加わる必要がある。
ブッシュ大統領は、一度目標を定めるとそれを粘り強く追う性格であり、いずれイラクを攻撃するというのが支配的な見方である。キューバ危機の際、ケネディ大統領は英首相、仏大統領に特使を送り、機密情報を見せ協力を求めている。イラク先制攻撃を正当化する証拠および作戦を広く公表するべきではないが、主要国のリーダーと情報を分かち合い、慎重な協議を繰り返し、協力を求める必要がある。手間と時間をかけることが、最終的には近道である。
(アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員)