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【グローバル社会は今 1】
加瀬みき


先進国首脳会議2006年ロシア正式参加へ

テロ対策契機に米国と“蜜月”の成果

(2002年7月16日付)

 先月末にカナダで開催された先進国首脳会議でロシアの正式参加国への格上げが決まった。

 しかし民主主義と市場経済先進国の「特別クラブ」への正式参加は、ロシアが戦後のドイツや日本のごとく民主主義化に成功し、経済が市場化したという証ではない。それどころか、ロシアには自由民主主義を確立するための基本的条件である組織機構そのものが整っていないという厳しい指摘もある。

 そのロシアが昨年9月の対米テロ発生以降欧米に急接近、欧米もロシアを「大物」として扱う姿勢を見せてきたが、G8入りはこの一連の流れの中で実現した。

 ソ連邦崩壊後、「凍傷が起こるザイール」とまで揶揄され、アフリカの貧困国と比較されるほどの経済難に苦しんでいるロシア。ブッシュ米大統領が敢然と立ち向かう対テロ戦争は、旧大国としての特別扱いを望むロシアに表舞台に立つ機会を与え、プーチン大統領がそれを上手く捕らえたと言える。

 ロシアの対応の様変わりは、欧米にとってもテロ対策上、非常に都合が良い。タリバン攻撃に際しての旧ソ連邦諸国への基地設置にはじまり、さらなるテロの脅威に怯えるアメリカにとって核や生物化学兵器がテロリストの手に渡ることを防ぐには、ロシアの協力が絶対に必要である。

 今やロシアは経済的制約から保有する核兵器や施設を十分に維持・管理できないばかりか、不満分子による各種兵器や核関連物質のテロリストへの横流しが心配される。

 建設的に世界に貢献できるだけの経済力も政治力もないロシアは、コソボ戦争をはじめ欧米の政策障害になることにより存在を誇示してきた。しかし対米テロ発生後、プーチン大統領はロバートソン・NATO(北大西洋条約機構)事務総長と頭を突き合わせ協議し、ブッシュ大統領との記者会見では同大統領の腕に手をかけ仲の良さを見せつける。

 テロ対策に積極的に協力するばかりでなく、ミサイル防衛構想、アメリカのABM条約脱退、NATO拡大構想、イラク攻撃の可能性に対してと、いずれもロシアの大反発が予測された重大課題に唖然とするほどの理解を示している。

 このロシアの姿勢が、5月に締結された米ロ間の戦略核削減条約、サミットで決まったロシアの大量破壊兵器処理に向けた経済支援、さらには、NATOと対等な関係を結び、核拡散防止、テロ対策などの分野で協力を進めるNATO―ロシア理事会の設置やG8正式加盟に結びついた。

 このようにロシア経済への支援策を施し、かつ大国として特別扱いをするのは、国内の反対を押し切ってここまでの政策転換をしてきたプーチン大統領に報いることにより同氏の立場を固め、さらなる協力を確保するという狙いがある。

 また、原油と天然ガス資源を合わせるとサウジアラビアに匹敵するエネルギー供給国になりうるロシアは欧米諸国の中東依存を軽減する可能性をも秘めている。ユーラシア大陸の安全保障政策と地域安定、そしてエネルギー対策を視野に入れると、こういった気前よさは安い対価と言えるかもしれない。

 ロシアのNATOやG8への参画により、両組織の機能や存在意義は大きく変貌した。組織拡大に伴い個別加盟国の発言力は弱まり、重大な政策決定は益々もって限られた国同士の交渉によることになるだろう。

 今回のG8の成果は、日本を含めたG7によるロシアの大量破壊兵器処理向けの総額200億ドルの経済支援以外はないとささやかれるが、それはまさにアメリカの狙いどおりと同国の関係者は言う。唯一の超大国アメリカにとり、多国間組織は自国が抱える課題をかなえるため適宜利用する道具という割り切りが、さらに強まるのも日本は肝に銘じておかなければならない。

(アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員)