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(2002年4月23日付)
田中外相更迭から始まる、鈴木疑惑、政策秘書給与疑惑、加藤疑惑。息つく間もなく、永田町の話題がメディアを埋め続けている。筆者自身も少々辟易するくらいだが、メディア報道にかかわる重要な問題として、今回は敢えて政策秘書の給与疑惑を取り上げてみたい。
この問題は、社民党の辻元清美元議員が、平成9年4月から10年末までの1年8カ月間、他の参院議員の秘書を自分の政策秘書として登録し、名義料を除く約1500万円を詐取したのではないかという疑惑が、3月20日発売の「週刊新潮」誌に報じられたのがきっかけだった。
社民党は調査委員会を設け、25日、中間報告を公表した。これも客観的資料の裏づけがあるわけではなく、十分なものではなかったが、それでも明らかに辻元議員が20日に行った弁明とは異なり、政策秘書が、単なる名義貸しだったことが明らかになるなどしたことで、辻元議員の辞職にまで至った。
その後も、政策秘書制度を悪用した数々の事例が次から次へと浮上し、政策秘書制度の悪用については、与野党入り乱れて「泥仕合」の様相を呈してきている。
国民の税金が、不正に使用されることについて、厳正なチェックが求められていることは言うまでもないが、今回の政策秘書給与疑惑とメディアによる一連の報道は、メディアの政治報道が抱えている矛盾を、図らずもさらけ出すことになった。
メディアはこれまで、政策秘書制度の「危うさ」について徹底的に追及する機会が何回かあったはずである。にもかかわらず、問題の追及は、これまで中途半端に終わってきたと言わざるを得ない。
政策秘書制度は、国会議員の政策立案能力の向上を目指し、1994年1月に与野党一致で導入された。財政難であるにもかかわらず、年間80億円もの予算をかけた制度の導入だった。
しかし当初から、従来の公設秘書が横滑りで政策秘書になり、しかも公設秘書よりも高い給与なのに、仕事内容がさして変わらない、アメリカの立法調査官と比較し、システムが貧弱すぎる、議員の裁量で仕事が決められる、などの問題点が指摘されていた。
メディアも導入当時はこれらの問題点を指摘していたが、いったん導入された制度にいつまでも異議を唱えてもニュースにならないとばかり、ニュース価値がなくなるとともに、取り上げる機会はほとんどなくなった。
メディアにより監視されているという緊張感のなさが、名義貸しなどの不正を横行させることにもつながる。山本譲司元議員の政策秘書給与詐取事件で報道は再燃したが、概して「ここまでの犯罪性は個人の特殊な事例」というような論調が優勢で、全体的な制度の問題点を追及しようという厳しさが感じられなかった。
しかし、ここまで政策秘書制度の矛盾が明らかになってくるともう「待ったなし」だろう。メディアに求めたいのは、疑惑の当事者を呼んで弁明させることよりも、その調査能力・取材能力を生かして、制度自体にどのような問題点があるのか、全議員について、政策秘書制度の悪用がないかを徹底的に洗い出すことである。議員側も、身に覚えがないならば、すべてのデータを開示し、信頼を回復すればよい。
その上で、不正ができないように、国民が給与の流れを正確にチェックできるシステムを提案すべきだ。同じ追及の甘さが繰り返されれば、政治不信だけでなく、政治をチェックして有権者に政治の矛盾を伝えきれないメディアへの不信もまた、増幅されることになる。(明治学院大学教授)
(明治学院大学教授)