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メディア月評

連載コラム
「メディア月評」
神戸女学院大学教授・村上直之

【11】


総選挙をめぐる世論調査の失敗

開票報道では予想議席数をミスリード

無党派層を把握できない電話調査法に問題

(2003年11月25日付)

“民主党勝利”の大茶番劇も

 この秋の総選挙は、メディアが大きな誤りを犯した選挙として、わが国の世論調査の歴史に記録されることだろう。私はこの欄で2度にわたって最近の世論調査の危うさを指摘してきたが、今回は選挙予測の二つの失敗の原因について探ってみたい。

 まず、出口調査の失敗である。選挙当日の9日8時、投票終了と同時にテレビ各局は各党の予想獲得議席数を大幅にミスリードして伝えた。なかでも、日本テレビの「バンキシャSP」は「民主党勝利」を報じるという大茶番劇を演じてしまったが、朝日系も毎日系も大幅に予想議席数を誤った。

 このような出口調査の失敗は、1989年、茨城での参院補欠選以来のことである。当時はまだ出口調査が始まったばかりで不慣れな調査員が原因とされた。だが、今回の失敗は調査員のせいでもなければ、不在者投票数のせいでもあるまい。

 というのも、フジテレビの「FNN踊る大選挙戦!」のように議席数をほぼ正確に予測した局もあったからだ。この番組の放送開始は9時台からだったが、他のテレビ局は速報性を競うあまりデータの集計と分析に失敗したのだ(各局による誤報原因の公表が待たれる)。

 だが、もう一つの失敗、選挙直前の新聞世論調査の情勢分析と選挙結果との大きな食い違いについては熟考を要する。新聞全紙が3日の朝刊で、表現は様々だが「自民圧勝」を報じたことによって、かえって圧勝するはずの自民が票を減らしたのだ、とは多くの識者の指摘である。

 メディアによる「アナウンス効果」が原因というわけだ。このアナウンス効果についてはさまざまな憶測がなされている。たとえば、60%を割る低い投票率にもかかわらず自民が伸び悩んだのは、無党派層の中でこれまで自民に投票していた層が棄権、あるいは民主に走ったのが原因だという。

アナウンス効果は働いたか

 これはマイナスのアナウンス効果の推測だが、逆に、社民や共産に投票していた層が民主に投じたせいだというのはプラスのアナウンス効果(新聞各紙は両党の得票減を予測していた)を推測したものだ。その点、読売新聞は選挙後に「ネットモニター調査」を実施して、世論調査の報道によって投票行動を変えた層は4%にすぎなかったと、この効果を否定していて興味深い(17日朝刊5面)。

 じつは「アナウンス効果」とは後づけ論理による言葉にほかならず、それがプラスに働いたかマイナス作用を及ぼしたか、その検証は、ほとんど不可能なのだ。では、なぜ、新聞の世論調査は失敗したのか。先の『読売』も答えてはいない。

 さて、最近のメディアによる世論調査は以前にも触れたようにRDD法という電話調査によるが、この方法では有権者の母集団、とりわけ無党派層の実態を捉えられなくなっているというのが私の推測である。

 電話調査は家庭電話の番号をサンプル対象としているが、無党派層である単身者所帯の多くが携帯電話を使っていて家庭用電話をもっていないため調査の対象外となっているのである(男女共学大学での私の調べでは60%以上)。

 1936年のアメリカ大統領選で、民主党のF・ルーズベルト候補と共和党のA・ランドン候補のどちらに投票するかを電話で尋ね、ランドン圧勝を予測して大失敗した例は世論調査史上あまりにも有名である。当時、電話のある家庭は裕福な共和党支持層に多く、民主党支持層の大半が電話をもっていないことを忘れていたことに原因があった。

 おそらく今後、家庭用電話非所持の世帯数は、インターネット電話の普及などでますます増加するにちがいない。

 (神戸女学院大学教授)