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(2003年7月29日付)
この7月は、初旬には沖縄県の中学生殺害・死体遺棄事件と長崎市の男児殺害事件、そして下旬には東京都心で発生した女子小学生4人の拉致監禁事件と、子どもたちを加害者や被害者として巻きこんだ犯罪事件の続発によってわが国のマスコミが狂奔した一カ月だった。
なかでも長崎の幼児殺害事件の報道については、18日朝の『テレビ朝日』の「モーニング」のなかで、一本30分の取材VTRがすでに150本にも達しているとキャスターが語っていたが、この発言がものがたっているのはテレビ各局の取材合戦の過熱ぶり以外のなにものでもない。
ところが、各局のテレビ報道をウォッチしながら、奇異に感じたことがある。事件現場や中学生や幼児が通っていた学校などの関係施設を映した映像に報道陣の姿がほとんど見あたらなくなったことだ。かつては、たとえば97年神戸の連続児童殺傷事件の場合のように、事件現場に殺到するマスコミの集団を画面に映しだすことによって事の重大さをアピールするというのがテレビ報道の常套手段だった。
テレビが自局リポーター以外の報道陣の姿をなるべく画面から排除する手法は、17日に発覚した東京の小6女児誘拐監禁事件の場合も同様であって、ここにはテレビ各局の報道姿勢の変化を読みとることができよう。
この変化が一昨年に民放連が公表した「集団的過熱取材問題への対応について」や今月初めに発足した放送倫理機構に対する対応策のひとつだとすれば、なんとも欺瞞的な対応といわなければならない。
先週本欄で、この事件の報道について河野義行氏が「報道の手法は以前からと何も変わっていない」と述べ、東晋平氏とともにその具体例を挙げているが、テレビ画面から報道陣の姿を排除することによって、取材現場のありようを視聴者の目から隠蔽するものであろう。
さて、長崎の事件をめぐって少年法改正の論議を喚起しようとするメディアの動きについて、ここでぜひ指摘しておきたい。
『日本テレビ』は7月の定例世論調査で、「あなたは子どもでも刑事罰を与えることができるように変えるべきだと思いますか?」という質問に対して、「刑事罰を与えるように変えるべき」という回答が69・5%だったとウェブ上で公表している。(http://www.ntv.co.jp/yoron/2003_07/200307/index.html)
また、『産経新聞』もウェブ上で「少年法の再改正は必要だと思うか」の質問を設け、「必要」の回答83%に達したと伝えている。(http://www.sankei.co.jp/edit/anke/kekka/030721nagasaki.html)
前者がサンプル数1000人、回答数600人の層化二段無作為抽出法による調査とされるのに対して、後者はウェブ上に寄せられた1609件の回答を集計した結果だという。
両者の回答が大きく食い違うのは調査方法の違いによるものだが、『産経』の調査は自己参加方式の調査で代表性がない。もっとも、『日本テレビ』の方も回答の収集法が明らかでない。
以上の例にかぎらず、最近のわが国のマスメディアは、電話やインターネットを用いた統計学的に信頼性の低い世論調査によって国民感情を誘導しようとする傾向がありはしないだろうか。(神戸女学院大学教授)