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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【20】



法曹関係者に裁判を見直させた『ル・モンド』紙

(1999年11月27日付)



 先月の本欄で紹介した南フランスの「未成年者誘惑」事件に判決が下った。
 被告は臨時教員ミュリエル・フーカールさん。十四歳の少年との一年間にわたる愛人関係に対し、モンペリエ軽犯罪裁判所は未成年者誘惑罪で執行猶予付きながら一カ月の禁固刑を言い渡した。検察側が禁固三カ月を求刑していただけに、有罪とはいえ極めて軽い量刑である。
 公判中、ミュリエルさんには多くの人々から支援の手が差し伸べられた。その中には少年の保護者で彼女を警察に訴えた親権者の大叔母もいた。大叔母はミュリエルさんと電話で話し合い、初めて甥(おい)が同棲(どうせい)前から麻薬患者で非行を繰り返していたことを知ったという。
 判決に対し、ミュリエルさんは「未成年者を親権者の手から取り上げた、という理由で有罪とされたことに傷ついた。誰も彼に手を差し伸べていなかったのに。私は少なくとも彼を最悪の事態から救った。しかし、法は法だというのが裁判所の答えだった」(『ル・モンド』紙十一月十二日付)と語っている。
 有罪の判決を喜ぶ人はいない。しかし、裁判官はミュリエルさんの犯罪記録に罪状を記載しないことを追記している。フランスでは犯罪記録が白紙でないと、公務に就くことはできない。「追記」によって裁判官はミュリエルさんが職を奪われることを事前に回避した。
 この「配慮」を準備したのは『ル・モンド』紙の十月の記事だった。同紙はこの裁判結果によっては、現代社会の実態からすればむしろ被害者の立場にある教諭が職を失う危険を指摘して、裁判所に警告していたのである。
 とは言うものの、教諭は三回の離婚で「愛の渇き」を覚えていたことを陳述していた。十九歳年下の少年との愛人関係は、いかに「恋愛の国」フランスの司法といえども無罪を宣告することは難しい。『ル・モンド』紙の指摘は頭を痛めていた法曹関係者に裁判を見直す適切な手がかりを与え、微妙な解決の糸口を提案したのである。

(三光洋〈さんこう・ひろし〉在仏ジャーナリスト)