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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【16】



農産物の安全性を争点に米仏が激しいさやあて

(1999年9月11日付)



 フランスの農業人口は百万人。労働人口の三・七%に過ぎないが、欧州連合(EU)第 一の農業国の地位は揺らいでいない。
 ワインやチーズが日常生活の主役であるグルメの国では農業問題への国民の関心は極め て高い。それだけに米国産ホルモン牛肉や遺伝子操作穀物の輸入には国民の誰もが反対し ている。
 米国は欧州連合の輸入拒否に対し、七月からチーズやフォアグラに一〇〇%特別関税を 課する制裁措置を打ち出した。これで大打撃を受けたフランス農民の怒りはマクドナルド に向けられた。各地で堆肥(たいひ)や野菜・果物がマクドナルドの店先にぶちまけられ 、ロックフォール・チーズの生産地として知られるフランス中部ミヨーでは建設中の新店 舗が破壊された。
 こうした中で九月に入ってシャンパーニュ地方の小村ポマクルで農業展示会が開かれた 。牛や羊が野原を駆け回り、展示スタンドではシャンペンが次々に空けられ、高級牛肉シ ャロレのステーキが焼かれている。十六日にはシラク大統領が二時間半にわたって会場を 訪問。将来への不安を抱いている農民達と腰を据えて歓談した。
 大統領は「大地なしで人間は生活できない。人は大地と共に生きている。人間の文化と 農業は切り離せない。言葉の倫理的な意味において我々はすべて農民である」と演説。参 加農民から拍手喝采された。
 十八日付け『ル・モンド』紙は「シラク大統領はフランス農村のチャンピオン」と評し ている。まもなく世界貿易機関(WTO)会議が開催されるが、米国産農産品が交渉の焦 点になる。フランスは食品の安全性と農村保全のためには、米国の圧力にも一歩も引かな い構えである。

(三光洋〈さんこう・ひろし〉在仏ジャーナリスト)