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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【10】



『ル・モンド・ディプロマティーク』誌が監視社会化に警鐘鳴らす特集

(1999年6月12日付)



 日本の国会で審議されている通信傍受は、欧州でも重大争点だ。フランスを代表する高級夕刊紙『ル・モンド』が発行する月刊『ル・モンド・ディプロマティーク』誌は三月、電話とインターネットを対象に欧州諸国が極秘に進める監視計画を特集した。

 携帯電話やインターネットの爆発的な普及による通信設備の激変にともなって、ハイテク化・国際化する組織的犯罪対策を理由に、警察・税関・国防省など監視権限を持つ当局が、民主的な協議抜きで実現をもくろむ欧州社会の監視化に対し、懸念を表明した内容である。

 同誌の敏感な反応は、かつて本メディア欄(一九九八年四月十一日付)にもリポートしたように、八五年、国際環境保護団体グリーンピースの核実験監視船が爆破された事件への国家情報機関の関与をスクープした『ル・モンド』紙記者が、大統領府による盗聴の標的となった実体験に裏打ちされたものだ。

 しかし、一般市民の危機感は薄い。最近の世論調査によれば、個人的な行動や事実に関する情報が得られるような技術の発達を、市民の保安強化のための肯定的な進歩であると捉える者が六〇%に上った。その裏には、犯罪組織も高度な通信技術を駆使できる以上、国家に監視能力を与えるのは当然、との見方がある。

 『ル・モンド』誌のような鋭利な問題意識はフランスでも多数派とは言えない。しかし、通信傍受の必要性を否定しない専門家やメディアも、一方で「監視を監視する」手段、プライバシー尊重という基本的人権を守る法的保護の欠如には警鐘を鳴らしている。それは、犯罪対策とは無関係の政治的な操作に利用された前例を想起するからだ。

(三崎ロイヨ由美子・在仏ジャーナリスト)