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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【8】



マスコミを“乗っ取る”市民団体の新手法の功罪

(1999年5月8日付)



 破壊される環境、失業者やホームレスの貧窮(ひんきゅう)、根強い人種差別――人が 目をそむけたがる暗い地味な社会問題を、有名人のスキャンダルや異常な犯罪事件並みの 「売れる」ニュースに仕立て上げる市民団体の「メディア・ジャック(乗っ取り)」が、 フランスで続発している。

 ホームレスの居住権を主張する団体は高級住宅街の空き家を徴発(ちょうはつ)し、失 業者の権利を叫(さけ)ぶ団体は職安事務所を占拠。

 移民擁護団体は、国外退去処分となった外国人を満載した飛行機の離陸を妨害し、エイ ズ対策の促進を要求する団体は、薬害エイズ事件にかかわる元閣僚の写真に血糊(ちのり )をぶちまける派手なデモを演出。新聞・雑誌、テレビが喜んで飛びつく、違法行為すれ すれの際どいパフォーマンスだ。

 いずれも、何十万も人を集めたデモを組織する必要はない。極秘に保っておいた行動の 予定を直前にメディアに洩(も)らすだけで、活動の参加者数を上回るほどのジャーナリ ストを集められる。乏しい人員と手段しかなくても、メディアを通しさえすれば影響力を 何倍にも増幅できる情報の魔力を、これらの団体は知り尽くしているのだ。

 実際、大統領選挙運動の最中で、最初は目立たなかったホームレスのための高級住宅徴 発も、報道を重ねるうちに、選挙の趨勢(すうせい)を左右する貧富の社会的断層の問題 に発展した実例がある。

 ニュースとして追うはずの対象に、逆に乗っ取られ利用されるメディアは、「センセー ショナリズム至上主義」の手の内を完全に読まれていることをさらけ出した。

 単なる受け手にとどまらず、情報の発信源となる可能性を発見した市民に、自らも観察 され監視されている事実に気づく時ではないだろうか。

(三崎ロイヨ由美子・在仏ジャーナリスト)