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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【7】



戦争プロパガンダ(宣伝) 過去の日独、現在のユーゴ

(1999年4月24日付)



 外交的解決の努力もむなしく、北大西洋条約機構(NATO)軍による空爆に突入したコソボ紛争。戦火に包まれるユーゴ連邦セルビア共和国の首都ベオグラードで、胸に標的を張り、身を挺(てい)して国を守る決意を誇示する数百人もの市民の姿は、欧州諸国に衝撃(しょうげき)をもたらした。かつての日本の「特攻隊」を彷彿(ほうふつ)させるこの姿は、独裁権力の統一メディアによる絶対的報道統制、戦争プロパガンダの効果のほどを物語っている。

 空爆が開始されるや、外国メディアの活動を制限するとともに、あらゆる報道内容の検閲、自由なコメント禁止、「愛国的」路線への一本化を強制した政府に、国内のほとんどのメディアが以前の批判精神もかなぐり捨てて追従。一方、発禁処分を受け国外で公正な報道を試みた独立系日刊紙は、社主の暗殺によってその声を封じられた。

 世論に最大の影響を及ぼす国営テレビが連日のように放送する、米機撃墜の華々しい戦果や空爆による民間施設の損害は、大写しのカットの連続で、内容の真偽を確かめようがない。「NATOの犯罪的侵略」に抗議するコンサート、マラソン大会、宗教的儀式など、国家的な不屈の精神を高揚する映像からは、民族粛清(しゅくせい)の犠牲となったコソボ難民の悲惨な現実が完全に締め出されている。

 現実から切り離され思想の自由を奪われたセルビア人も、ナチスのイデオロギーに狂ったドイツ人、「大東亜戦争」の正義の幻想に操られた日本人の悔恨(かいこん)の悲劇を味わうのだろうか。いかなる戦争の論理も、権力なき市井の庶民を常に犠牲とする歴史の法則は、このユーゴ空爆においても例外なく証明されようとしている。

(三崎ロイヨ由美子・在仏ジャーナリスト)