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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【5】



総辞職した欧州委員会 腐敗体質をただした報道の力

(1999年3月27日付)



 今月中旬、欧州連合の行政機関である欧州委員会は、全委員の総辞職という前例のない事態に陥った。各国政府の後ろ盾を背に、腐敗体質を温存してきた「欧州の内閣」が初めて直面する政治的危機の陰には、欧州メディアの動員力があった。

 発端は半年前、地元ベルギーの新聞『ラ・ムーズ・ラ・ランテルヌ』に出た、委員会人道援助局の不正な予算運営を疑問視する記事だった。特に、教育・職業訓練担当委員であるクレッソン元仏首相が、知人を架空の職務に任命し、欧州公費を乱用しているとの記載に、同委員が過剰に反論。それを国際通信網を持つフランス通信が取り上げ、全欧州のメディアの関心を呼んだ。

 一方委員会側は、「一部情報の凍結」などを勧めた内部向けの秘密文書を回したり、旧知の馴れ合い関係にある記者を入念に選び、全費用を負担した「アフリカ取材旅行」を企画するなど、旧態依然のメディア対策を弄し、却って疑惑報道の激化を招いた。ユーロ導入で欧州に未来の命運を賭け、欧州公費の用途に一層の透明さと厳正さを要求する世論の声を、不正追及の背後に読み取れなかったのだ。

 もはや無視し難い規模となった不正疑惑は、欧州議会による委員会の不信任投票にまで発展し、最終的に容赦なく不正の実態を指摘した独立調査委員会の裁断が、ついに総辞職に導いた。

 「欧州の民主主義にとっての勝利」(エクスプレッセン紙)「数カ月の混乱など、安い代価であろう」(フィナンシャル・タイムズ紙)と、危機をチャンスとして歓迎する欧州メディア。真の民主的機構の建設を目指す欧州市民の声となり、今後も「第四の権力」の機能を十分に果たすだろう。

(三崎ロイヨ由美子・在仏ジャーナリスト)