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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【2】



『鎖につながれたアヒル』誌が欧州人権裁判所で10年越し勝訴

(1999年2月13日付)



 国内の最高司法手段に訴えても正義を得られない場合、欧州人権条約に照らし裁判の見直しを可能とする欧州人権裁判所は、欧州市民にとって「ヨーロッパの最高裁」としてその権威は高い。一月二十一日、同裁判所が「表現の自由の侵害」で仏政府に下した有罪判決は、報道規制に関する仏国内の法解釈、ひいては法律をも揺るがす波紋(はもん)を広げている。

 一九八九年、仏大手自動車メーカー「プジョー・シトロエン」の賃上げスト紛争の最中、週刊誌『ル・カナール・アンシェネ(「鎖につながれたアヒル」の意)』が「プジョー」社社長の納税申告書を公表した。労働者の賃金わずか一・五%増を拒否する社長の給与が、二年間で約四六%も増加していることを暴いたこの特ダネは、過激な当局批判と暴露記事で長年の歴史を誇る諷刺(ふうし)・調査報道誌のお家芸だ。

 社長は直ちに同誌を告訴、政府も「公文書横領罪」で民事訴訟を起こしバックアップ。結局「税務機密隠匿(いんとく)侵害」で敗訴した『カナール』誌は、欧州人権裁判所に十年越しの執念を賭けた。

 一方、欧州裁判所は、大企業の社会紛争のような「一般的利益に関わる問題」について情報と証拠を伝達するのは、民主社会におけるメディアの義務と判断。「ある程度の誇張または挑発」的な手段にも寛大な姿勢を示し、週刊誌の「正当な目的の追求」に対する有罪判決は不当であると結論、同誌の全面的勝訴となった。

 この判決が報道の自由にとって一歩前進となることは確かだ。とともに「正当な目的」とは何か、さらにその手段について、ジャーナリストが改めて自問する好例とすべきだろう

(三崎ロイヨ由美子・在仏ジャーナリスト)