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連載コラム
「欧州メディア時評」

欧州メディア時評

【1】



「モニカゲート」をフランスではどう報道したか

(1999年1月23日付)



 米大統領を弾劾(だんがい)裁判にまで追い詰めた「モニカゲート」事件は、発端からフランスのマスコミでも大きく取り上げられた。政治家の私生活に無関心なフランス人が注目したのは、大統領の性生活の詳細などではなく、ひとりの人間を徹底的に辱(はずかし)めることによって民主主義の原理を蝕(むしば)みつつある米国社会、及びメディアの狂態(きょうたい)だ。

 週刊誌『ル・ヌーベル・オプセルバトゥール』は、インターネットを悪用し世界中の家庭や職場、大学、図書館に一個人を晒(さら)し者にするような「公式文書」を流した公権力に、是非を問うこともなく追従した米国メディアの行為を、「ジャーナリストの職業倫理と政治的責任の放棄(ほうき)」と断じた。

 また、「我々が政治家の私生活に目を奪われているうちに、当の政治には無知になってしまう」と、市民こそ、この低俗な事件の最大の被害者である点を喚起(かんき)した。

 メディアの逸脱(いつだつ)に対するフランス市民の反応は敏速だ。報告書の一部を公開した日刊紙『ル・モンド』には、フランスの良識とも評される高級紙の「商業主義的堕落(だらく)」と、読者からの批判が殺到した。

 同紙は投書欄で批判とともに支持の声も紹介。また、スペースを割いて、“米国の政治に重大な危機をもたらし得る文書の歴史的性質を考慮し、読者に自由な判断の手段を提供するため公開に踏み切った”経緯(けいい)を説明した。更に、問題となった特集号が結果的に二〇%増の売り上げを収めたのは事実だが、掲載の目的は「明確な真実の報道にある」と強調した。

 一国の国民は、それにふさわしい指導者を得るというが、メディアもまた然り、と感じさせるフランスの報道ぶりであった。

(三崎ロイヨ由美子・在仏ジャーナリスト)