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(2002年3月12日付)
かつて『週刊新潮』には、「黒い報告書」という長寿連載があった。主として男女関係のもつれに端を発した実際の事件を題材にした煽情的な読物で、末尾には毎回「最近の事件を素材にした創作です」という但し書きがつけられた。
同誌3月7日号の《主犯八木茂に捧げた「武まゆみ」女の愛憎18年》は、その「黒い報告書」がよみがえったかのような記事であった。
埼玉県で起きた連続保険金殺人事件の公判で、実行犯の一人に判決が下ったことを受けたものなのだが、タイトルの脇に「特別読物」と銘打たれていたのである。「読物」という言葉には、「創作」に近いニュアンスがある。『週刊新潮』はこの一語で、“この記事は客観的な事件報道ではありませんよ”と自嘲的に宣言しているわけだ。
中身を読めば、公判での武被告の供述・証言を素材に、事件の顛末が安手の犯罪小説のように再現されている。証言の真偽を確かめる検証作業の跡は皆無で、まさに興味本位の「読物」でしかない。
同誌の生みの親ともいうべき存在であった新潮社の元重役・斎藤十一氏(故人)は、かつて『朝日新聞』のインタビューで、「『週刊新潮』も文芸だ」「文芸に正義も真実ない」と言い放った。これは、「『週刊新潮』はジャーナリズムに非ず」という宣言に等しい。
同誌の記事の多くは、報道というよりは文芸・読物であり、事実を「素材にした創作」でしかないのである。
(前原政之・ジャーナリスト)