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中国メディア事情

泉 京鹿

【12】(2006年7月25日付)


広告が映し出す社会の変化

ネットなど新興勢力に顕著な伸び


 今月19日、中国国家広播電影電視総局と国家工商総局は、ラジオ、テレビの医療案内及び通販番組の内容粛正を要求する通知を発表した。北京の一般家庭で見られる膨大な数のチャンネルをザッピング(次々に替えること)すれば、極端な使用後の効果を延々強調するだけの怪しげな医薬品、健康食品、特に豊胸やダイエットの効能を謳った商品紹介が、昼夜を問わず驚くほどあふれている。今回の通知は遅すぎるくらいだ。

 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4大メディアにおいて最も広告出稿量の多かった医薬品、健康食品業界は、競争の激化に伴う販売価格の低下、原材料コストの上昇等によって、利益率が上がらないところへ、国の監査管理強化で打撃を受けた。05年上半期には前年同時期比で、同業界の新聞広告出稿量は初めてマイナスに。しかしこれは、この業界の広告そのものが減ったわけではなく、部分的に新聞枠から番組枠に移行していたわけだ。

 近年、医薬品、食品、家電、日用雑貨、不動産など上位10位の業界が、全国テレビ広告出稿総額の約60%を占め、中国広告市場の生存と発展にこれらの産業の発展及び変動が直接影響すると言われてきた。逆にこれらの広告の動きから、中国社会が如実に読み取れた。

 昨年、従来の4大メディアの広告出稿量が1981年以来初めて一桁成長に留まり、新聞広告に至っては史上初めてのマイナス成長を記録。『中国メディア産業発展報告』(メディア青書)によれば、05年全国広告出稿量は前年比24%増。05年第1期の統計では、テレビは23・34%、ラジオは87・13%、屋外広告は71・16%、雑誌広告は18・74%増。6・23%増に留まった新聞は、初めてGDP(国内総生産)の成長速度を下回り、過去最低値となった。

 とはいえ、05年の広告市場全体では出稿量は引き続き増加傾向にあり、06年も05年中央テレビのゴールデンタイムの3・85億元という巨額の入札額を見る限り、順調な発展を遂げており、問題視するほどではないかもしれない。しかし、経済成長を続ける中国で新規メディアの参入によるメディア構造、産業構造の変化に伴う中国広告市場の発展速度の鈍化は、大きな変革期の到来を予感させる。

 たとえば日用雑貨業界では、広告出稿分配比率の顕著な変化。「ゴールデンタイムの広告王」P&Gを例に取ると、中央テレビの出稿を減らし、湖南、広東、山東、四川、浙江、江蘇など地方局、衛星チャンネルへの出稿を拡大、全国から地方中心へと移行している。

 広告全体におけるテレビ広告の比率は80%から60%に減少。今年国内最高視聴率のドラマ『チャングムの誓い』でも視聴率10数%と、テレビ広告はかつてほどの効果は期待できないメディアになりつつある。

 また、4A(外資系)広告会社に後れをとっていた国内の広告会社の最近の勢いも注目に値する。その背景にはテレビに取って代わろうとする、新しいメディアの勃興がある。

 オフィスビルやマンションのエレベーターホールなどに設置された小型液晶モニターをほぼ独占している分衆伝媒(フォーカスメディア)は、ナスダック上場も果たした新興の会社。電話番号簿のイエローページの広告を独占している中国電信集団黄頁信息有限公司のように、航空、公共交通、高速道路などに関連する媒体に対して優勢な国内の広告会社が続々登場している。

 また05年ネット広告市場は31・1億元、04年より42・1%増加。来年には40億元に達する見込み。ネット広告の広告市場全体における比率は、01年は0・5%だったが、05年には2・3%までと急速に上昇している。

 テレビ広告だけを見ていれば中国人の嗜好や流行が見えたのは、今は昔。新興メディアの登場、管理・規制の強化で、ますます複雑になる広告環境から、中国社会は見えにくくなっている。

 しかし、広告は依然としてオリンピックを控え、さらなる新規メディアや規制の登場に対応しながら、中国の変化の陰日向につきしたがう存在であり、ますます目の離せないメディアを読むテキストであることは間違いない。

 (在北京フリーランスライター、翻訳家)

 いずみ・きょうか 1971年、東京生まれ。94年にフェリス女学院大学卒業後、北京大学に留学。博報堂北京事務所に勤務の後、フリーランスに。現在、北京を拠点にライターとしての活動のほか、翻訳など幅広く活躍している。主な訳書に『衛慧(ウェイフェイ)みたいにクレイジー』『ブッダと結婚』(ともに講談社)、『水煮 三国志』(JMAM)がある。