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中国メディア事情

泉 京鹿

【11】(2006年6月27日付)


中央テレビ 7時のニュース

17年ぶり新顔アナウンサーに交代


 17年ぶりの改革だ。中国中央テレビ(CCTV)の7時のニュース、『新聞聯播』のアナウンサーに新しい顔が登場、お茶の間を沸かせている。

 今月5日に初登場した二人は、男性アナウンサー・康輝(31)と女性アナウンサー・李梓萌(28)。今年30周年を迎える『新聞聯播』史上最年少の大幅な若返りが、中国全土を驚かせた。当の本人たちも3日前に知らされたという突然の大抜擢だ。

 番組開始以来、「党と政府の声として、天下の大事を伝播する」という趣旨を掲げてきた『新聞聯播』。80年代には常に平均50%以上、最高で58%という視聴率を記録したが、今年1月から5月の全国主要35都市における『新聞聯播』の平均視聴率はわずか5・6%(央視――ソフレスメディアリサーチ調べ)。

 それでも単純計算で7280万人が見ているとすれば、大きな数字ではある。放送開始直前の5秒の広告枠は入札制で、05年はP&Gが3・85億元で落札。落札価格は年々大幅に更新されている。

 7時から7時半には他局のニュース番組は皆無という完全な独占状態の「中央の声」であり、その上、莫大な広告収入があるとくれば、まだまだ強気でいけるはずの『新聞聯播』だが、社会の変化に伴い、改革を迫られて久しい。

 中国メディア大学の雷躍捷教授によれば、「中央のリーダーの動きや国内のニュースをさしおいて、国際ニュースがトップで報道されたのは、86年1月29日、アメリカのスペースシャトル・チャレンジャー号が爆発したときが最初(『南方週末』)」。これをきっかけに改革が始まるかに見えたものの、その日の報道は上層部の許可を得ていなかったとされ、その後には続かなかった。

 9・11同時多発テロの発生時さえ、トップニュースとして扱われることはなかった。「インターネットで海外のニュースがリアルタイムでチェックできるこの時代に、こんなニュース番組に意味があるのか」。そんな声が次第に高まっていった。

 02年にはアナウンサーたちが、口語的にニュースを読むために1週間特訓をしたことがある。日本語でいえば「……である」を「……なんですよ」、「……だ」を「……ですね」という具合に、ただ活字原稿を読み上げるだけの硬い口調ではなく、語尾を柔らかくして親しみやすさを打ち出そうという試みだ。しかしこれにはアナウンサーたち自身が異議を唱え、結局、元のままの方がいいとの結論に落ち着き、改革には至らなかった。

 そんな『新聞聯播』の新しい顔に対する人々の反応は様々だ。康輝は『東方時空』など人気報道番組や、朝のニュース担当、李梓萌は国際ニュース番組担当で若さといきいきとした表情が人気だった。概ね好意的に迎えられた若い二人への評価だが、一部批判的な声もある。

 「飛行機事故のニュースを読むとき、微笑みを浮かべていた。『新聞聯播』のアナウンサーは笑顔でニュースを読んではいけないと思う」(息子が空港で働いている女性)。

 それでもやはり多くの視聴者には新鮮だったらしく、視聴率は0・1%上昇した。ネット上にマイナス評価や批判が見られるのも、それだけ注目を集めているという結果にほかならない。

 「これでやっと正常。遅かれ早かれ若返りは必要。視聴者もいいかげんうんざりしていたところ」(30代・テレビ局勤務)。

 「長い間同じ顔が続いたのは、『新聞聯播』に競争のメカニズムが欠けていて、競争力も進歩もなかったことの証明。新顔の登場で、古顔も時代の要求の変化を感じ取るだろうし、緊張感も出ていいと思う」(20代・学生)。

 長年厳粛な表情でニュースを読み続けてきた古参アナウンサーは、徐々にこの番組から消えてゆき、今後さらに顔ぶれが変わる可能性もあるという。

 「彼は笑うことがあるのだろうか?」。常に厳粛で冷静な表情を、こう揶揄されてきた『新聞聯播』の顔の一人・羅京によれば、「髪型を切るのにも台長(中央テレビ局のトップ)の同意が必要」だという。

 次の改革の兆しは、案外、若い二人のアナウンサーの髪型あたりから見えてくるかもしれない。

 (在北京フリーランスライター、翻訳家)

 いずみ・きょうか 1971年、東京生まれ。94年にフェリス女学院大学卒業後、北京大学に留学。博報堂北京事務所に勤務の後、フリーランスに。現在、北京を拠点にライターとしての活動のほか、翻訳など幅広く活躍している。主な訳書に『衛慧(ウェイフェイ)みたいにクレイジー』『ブッダと結婚』(ともに講談社)、『水煮 三国志』(JMAM)がある。