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中国メディア事情

泉 京鹿

【9】(2006年4月25日付)


初の「ラジオ・テレビ青書」

オーディション番組『超級女声』を評価


 今月12日、中国ラジオ・映画・テレビの年間発展報告書『2006年中国ラジオ・映画・テレビ発展報告』が発表、出版された。

 『中国経済形勢分析と予測』(「経済青書」)、『中国社会形勢分析と予測』(「社会青書」)など大学や政府系のシンクタンクによる年度ごとの現状の分析報告書の「青書」には、昨年から『中国メディア産業発展報告』(「メディア青書」)が加わったばかりだが、今年、新たにこの「ラジオ・テレビ青書」が加わった。

 この「ラジオ・テレビ青書」の中で特に注目を集めたのが、湖南衛星テレビの『超級女声』に対する評価である。

 昨年9月27日付の本欄でも紹介したオーディション番組『超級女声』は、あまりの人気ぶりにその社会的影響が論議を呼び、国家広播電影電視総局の許可がなかなか下りず、今年の開催、放送が危ぶまれていた。携帯電話による投票の視聴者参加という形が民主化への欲求を体現し、未成年を含む若者が選挙運動のように票獲得に夢中になり、社会的に良くない影響を与えるなどといった点が問題になったと言われている。

 また、極端な「商業化」を批判する声も上がった。しかし、高視聴率のみならず冠スポンサー、携帯電話のショートメッセージ、テレビCMから街頭看板、バスの車体広告まで莫大な広告収入を獲得した番組の成功に、ビジネスモデルとしての熱い視線が集まったことは批判以上に無視できない趨勢であった。

 この『超級女声』を「ラジオ・テレビ青書」が肯定、評価し、同時に今年の番組制作と放送が批准されたことも発表された。この批准は3月半ばには制作者側には内々に伝わっていたといわれ、4月初め、今年の参加申し込み受け付けが始まり、番組制作発表の記者会見も開かれている。

 それでも制作責任者によれば、国家広播電影電視総局からの正式な批准を確認してから会見までの時間はわずか2日と短く、審査員への打診すら間に合わなかったほど慌ただしかったという。それは今年初め、同じ国家広播電影電視総局から「未成年の参加する省を跨いでの全国的な試合等は特別に申請して批准を受けなくてはならず、全国あるいは省を跨いでのオーディション番組やイベントなどは現地の省級衛星テレビで放送してはならない」という通達が出されていたことも無関係ではないだろう。

 この通達に従えば、省級テレビ局である湖南衛星テレビの成功を、中央が政治的手段で剥奪することができるということになる。こうしてぎりぎりまで絶望的、または多くの規制を受けてこれまでとは違ったものになってしまうと懸念されていた『超級女声』だが、最終的には今年も制作と放送が許可されただけでなく、中国のテレビ史上における輝かしい実績が評価され、「ラジオ・テレビ青書」にその名を刻んだ。

 また、湖南衛星テレビは、昨年『超級女声』終了後に韓国ドラマ『チャングムの誓い』を独占放送し、高い視聴率を記録したことも「ラジオ・テレビ青書」の中で評価されている。この時間枠は、従来のゴールデンタイムよりも遅い午後10時以降という時間帯にもかかわらず高視聴率だったため「中国のテレビ視聴者が、夜間にドラマを観るという生活リズムを作り出した」とまでいわれた。

 ちなみにこの3月、中央テレビが日本のドラマ『白い巨塔』を放送したのも、現在湖南衛星テレビが『おしん』を放送しているのも、この時間帯である。

 管理、規制に走るかに見えた通達から、一転して肯定、評価、批准へと国家広播電影電視総局の態度が変わった『超級女声』の例は、国家の事業であるテレビが、民意を尊重する視聴者本位のメディアであるとのアピールか。湖南衛星テレビを筆頭に、視聴率を伸ばし莫大な経済効果を生む地方局の競争力を、中央テレビが無視できなくなったことの現れか。

 昨年、今年と相次いで発表された「メディア青書」、「ラジオ・テレビ青書」にひとつの大きなうねりが見えるが、劇的に変化するメディアの発展状況への研究、分析、予測の次には、管理や規制、環境整備など、課題が山積みだ。

 (在北京フリーランスライター、翻訳家)

 いずみ・きょうか 1971年、東京生まれ。94年にフェリス女学院大学卒業後、北京大学に留学。博報堂北京事務所に勤務の後、フリーランスに。現在、北京を拠点にライターとしての活動のほか、翻訳など幅広く活躍している。主な訳書に『衛慧(ウェイフェイ)みたいにクレイジー』『ブッダと結婚』(ともに講談社)、『水煮 三国志』(JMAM)がある。