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【7】(2006年1月31日付)
旧正月祝う“中国の紅白歌合戦” |
中国人にとって、西暦の新年以上に大切な春節(旧正月)。今年は1月29日がその日にあたり、北京の人々は例年以上にそわそわとこの日を待ち望んだ。市内で禁止されていた爆竹が13年ぶりに解禁されたためだ。「爆竹がないと春節気分になれない」と感じる中国人は多く、この数年、北京の人々は爆竹鳴らしたさに地方都市や郊外に出かけたほどである。
古くは南北朝梁代の『荊楚歳時記』に、「正月朔日には(中略)……庭で爆竹を鳴らし悪鬼を払う」という記述が見られる。伝統ある厄よけ儀式なのだ。
除夕(大晦日)の夜、中国全土の家庭がチャンネルを合わせるのが中国中央テレビ(CCTV)の「春節聯歓晩会」。午後8時から約4時間、歌あり、踊りあり、コントありのこの「春節晩会」、「中国の紅白歌合戦」とも呼ぶべきものである。
春節晩会が始まったのは1983年からのこと。24年目と歴史は意外に長くないが、年越しといえば家族揃って餃子を食べ春節晩会を見るというのは中国の一般家庭には広く浸透している。
春節晩会はCCTVの五つのチャンネル及び全国各地の460数カ所のチャンネルで放送される。再放送も含めれば省レベルのテレビ局の6割が放送することになり、そのカバー範囲は相当なものとなる。
そのため番組の広告費も破格で今年の広告収入は4億元を超えた。番組前後の10分間のCM及び番組中の二度の時報広告が各10秒の計620秒で、1時間あたり1億元の広告収入となる。
半年ほど前から、全国の各地のテレビ局が推薦する歌や踊り、寸劇やコントの中から出演者を選出、少なくとも5度以上のリハーサルが繰り返される。本番、大勢の観客で沸く会場のメーンステージは生放送だが、実は録画映像も使われている。ちょっと見ただけではどこが録画なのかわからないが、近年、難易度の高い雑技など団体で行う多くの出し物はリハーサルで録画したものを放送することが多い。
今年の春節晩会のオープニングは大陸、台湾、香港の人気歌手の歌でスタート。また、昨年から国内の英語、スペイン語、フランス語チャンネルでも放送するなど、グローバル化も強く意識されている。
日本の「紅白」と明らかに違うのは、もはや「歌番組」とはいいにくいほどに、歌や踊りより漫才やコントの割合が年々増えていることである。歌の部分では伝統的な歌や民族音楽などが多く「若者に人気のある歌手が出ない」など不評でも、全国的に知名度の高い役者や漫才師の出るコントは大人気だからだ。
それでもこの数年の春節晩会の評価はさんざんである。「個性のない満漢全席。なんでもかんでも寄せ集めたところで、結局、誰の口にもあわなくなってしまった」「春節晩会は餃子みたいなもの。普段も食べられるのだから、どうしても除夕に食べなくてはならないわけではない」
しかし、視聴率は昨年で95%、今年は午前0時の時点で94・3%(CTR央視マーケティング調べ)に達したと発表されている。
海外旅行やディスコでのカウントダウンイベントなど、年越しの楽しみ方がこの数年で急激に多様化したため、この視聴率にも疑問を向ける声は高い。特に今年、北京に限って視聴率調査をしたら、まったく違う数字がでるはずだ。
数日前から少なからぬフライングはあったが、除夕の28日は朝から爆竹が鳴り響き、夕方からは市内の至る所で大花火大会となった。多くの人は寒い中でも外に出て爆竹と花火に歓声を上げ、家の中にいる人も窓の外の花火から目をそらす暇もないほどの騒ぎだ。
その対策なのか、今年は午前0時以降も過去20年の「春節晩会懐メロ」映像を流したり、懐かしいゲストを呼んだりという番外編の放送が延々続いた。視聴者参加型と銘打って、試行錯誤を繰り返し努力しても、思うようにいかず苦戦しているのは日本も中国も変わらないようだ。
(在北京フリーランスライター、翻訳家)
いずみ・きょうか 1971年、東京生まれ。94年にフェリス女学院大学卒業後、北京大学に留学。博報堂北京事務所に勤務の後、フリーランスに。現在、北京を拠点にライターとしての活動のほか、翻訳など幅広く活躍している。主な訳書に『衛慧(ウェイフェイ)みたいにクレイジー』『ブッダと結婚』(ともに講談社)、『水煮 三国志』(JMAM)がある。