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【5】(2005年11月22日付)
過激報道によるファン離れが要因 |
今年8月、『南方体育』『球報』の二つのスポーツ紙が、休刊宣言を発表。休刊とはいうものの事実上の廃刊である。『南方体育』は5年余り、『球報』は17年に及ぶ歴史に幕を閉じた。
数多くのスポーツ紙の中でも、海外のスポーツ報道をはじめ独特の視点や鋭い切り口などで人気のあった『南方体育』がつぶれたことの衝撃は大きく話題になったものの、これはほんの氷山の一角。
この数年間に発行を停止した中国のスポーツ紙はざっと10紙以上に及ぶ。さらに虫の息でもはや余命いくばくもないものは『青年体育』『体育週報』等、数え上げれば切りがないといわれる社会現象は、スポーツ紙の存在意義そのものが問われる深刻な事態だ。
今月11日には、2008年の開会式まであと1000日を迎えた北京オリンピックのマスコットも発表されたばかり。ますます活気づいてもいいはずの中国のスポーツ紙業界に一体何が起きているのか。
「一般に露骨な政府批判ができない中国メディアから、日々激しい批判攻撃にさらされている政府部門が中国サッカー協会。そんな状況をあおりすぎた結果、サッカーで売っていたメディア自身が被害を受けることになった」
そう語るのは欧迅体育文化諮詢有限公司(OCEANS Sports &Entertainment Marketing Ltd.)の朱暁東社長。たとえば芸能や文化の領域でメディアから批判されるとすれば個人だが、スポーツの場合は個人よりも各スポーツ協会など団体が批判対象となることが多いという。
上海生まれの朱氏は18歳で日本に留学し、一橋大学を卒業。Jリーグの企画部で、日中韓のサッカー交流の企画・推進などに携わった後、国際サッカー連盟(FIFA)主催のスポーツマネジメントのマスターコースを受講。FIFAから女子サッカーW杯事務局責任者として派遣され中国に帰国したという経歴の持ち主で、中国のみならず世界のサッカー事情に詳しい。
「とはいえサッカー協会は、ちょっとかわいそうだと思います。PRが下手なだけ。メディアとのコミュニケーション、情報管理ができていないのが批判される最大の原因でしょう」
またメディアに対して傲慢で「われわれがいなければ、お飯食い上げ」的態度・発言も目立つため、反発を招く。国内メディアはサッカー協会を「無能」「腐敗」などと徹底的に攻撃。
「実はさまざまなスポーツの協会団体の中でも、サッカー協会は一番近代的で(腐敗どころか)クリーンな団体」(朱氏)といわれるが、ファンもメディアも熱くなった試合の微妙な判定を「黒哨(ブラック・ホイッスル=八百長審判)」だと騒ぎ立てる。
決定的証拠をつかまない限り調査は困難かもしれないが、厳しい処分のできないサッカー協会に苛立ったメディアがあらゆる審判のミスや、そうでないものに対してまでやたらに「黒哨」だと責めるのが日常化。結局、報道もファンも「協会がだめだから、中国サッカーはだめなのだ」という結論に落ち着く。
海外情報や商業性を取り入れるなど、海外との交流が盛んでグローバル化が進めば進むほど、結果や対策を海外と比較され、短いサイクルで機敏な対応を要求される。それは報道される側だけでなく、する側にいえることでもある。
だとすれば国民的人気スポーツだったサッカー人気に、このところかげりがみられ、ファン離れが進んでいるといわれる原因は、極端にいえば何もかも八百長だと思わせてしまうような過激報道に起因し、その結果、スポーツメディア自身がばたばたと倒れてゆくのを招いた例と同じ轍を踏まないよう、他のスポーツ協会やスポーツメディアも意識せずにはいられないはずだ。
一方で朱氏のようにスポーツにビジネスチャンスを見出し、スポーツマーケティングの会社を立ち上げる人も増えている。
スポーツをとりまくメディア・ビジネスは、オリンピックを迎える前に、すでに大きな変革期を迎えているのかもしれない。
(在北京フリーランスライター、翻訳家)
いずみ・きょうか 1971年、東京生まれ。94年にフェリス女学院大学卒業後、北京大学に留学。博報堂北京事務所に勤務の後、フリーランスに。現在、北京を拠点にライターとしての活動のほか、翻訳など幅広く活躍している。主な訳書に『衛慧(ウェイフェイ)みたいにクレイジー』『ブッダと結婚』(ともに講談社)、『水煮 三国志』(JMAM)がある。