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(2000年7月4日付)
東京の夜道を歩いていると、自転車に乗った少年たちが警察官に呼び止められ、住 所などをしつこく尋ねられている場面にときどき出会う。警察官は、以前は二人組が 普通だったが、最近は三人組が目立つ。尋問態度は丁寧だが高圧的で、それを嫌って 少年が憤慨したら、これ幸いと補導してしまうのだろう。夜中の巡回で捕まえる「敵」 がいた方が、治安維持のために増員した名目が立つのだとお見受けした。
これと同じことは「世界の保安官」であるアメリカの外交についてもいえる。アメ リカは冷戦後、イラク、ユーゴスラビア、北朝鮮、シリア、イラン、アフガニスタ ン、ミャンマー、キューバなどを「世界平和の脅威であり、国民への人権侵害を続け るならず者の独裁政権」と定め、軍事・経済両面から制裁を加えてきた。冷戦の宿敵 だったソ連が崩壊した後、アメリカの世界に対する支配力が落ちることを防ぎ、国防 総省やCIAが予算を維持する名目として「ならず者国家」(rogue states)のリストが作られた。
だが先日、アメリカはすべての「ならず者国家」の危険度を「懸念がある国家」に 格下げした。アメリカは、南北首脳会談によって北朝鮮の危険度が下がったと認めた のだが、その際に残りの「ならず者」たちも一緒に減刑した。
なぜ、そんなことをしたのか、最近の世界情勢を見れば思い当たる。たとえばイラ クではサダムフセイン政権に対するアメリカの軍事・経済制裁が続いているが政権は 崩壊せず、むしろ一般の人々の生活が制裁で悪化し、反米感情の裏返しでサダム支持 が続いている。
コソボを弾圧したミロシェビッチ大統領の追放を狙って制裁したユーゴスラビアも 似た状況だ。アメリカは昨年、コソボのアルバニア人を助ける際に「自治は認めるべ きだが、ユーゴからの独立は認めない」と言っていた。今ではコソボのアルバニア人 も、独立を認めないアメリカに対する反発を強め、NATO軍は嫌われつつも撤退の 時期を見失っている。
イランでは民主化運動が続き、シリアではアサド大統領の死後、変化の兆しが見え ている。アフガニスタンは「テロリスト養成学校」を閉鎖すると発表した。各政府と もアメリカに対する敵視をやわらげているが、国民感情としての反米意識は強く、今 の機会にこれらの政府と和解した方がよいとの意見が米国内外にある。キューバにつ いても同様で、すでにアメリカは制裁の一部解除に踏み切った。
北朝鮮に関しては、ミサイル「テポドン」に対抗するためアメリカは「ミサイル防 衛(NMD)構想」を進めていた。これは冷戦終結で棚上げされた「スターウォーズ 計画」を復活しようとする動きだったが、南北首脳会談でそれは難しくなり、逆に在 日・在韓米軍の存在意義さえ揺らぎ出している。
過去百年以上にわたって近隣の大国から支配や介入を受け続けた朝鮮半島の人々に とって、民族自決は悲願である。首脳会談はそれを達成する第一歩として快挙だった が、これで朝鮮半島に対する周辺国の介入がなくなるわけではない。中国は、首脳会 談を機にアメリカの影響力が低下するのを喜んでいるし、ロシアのプーチン大統領は 訪朝を決め、再び北朝鮮への影響力拡大を狙っている。アメリカも世界支配をやめた わけではなく、「ならず者国家」への対応軟化は大統領選挙前のとりあえずの戦略と も読める。
冷戦終結から十年、世界は和解と対立が入り混じり、先が見えにくい状態が増して いるといえる。(ジャーナリスト)
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