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地球Web

連載コラム
「地球Web(連環)」

【4】


復活するアメリカの左翼運動
IMF・世銀総会への反対デモ盛ん

(2000年5月2日付)


 四月十六、十七日にワシントンで開かれたIMF・世界銀行年次総会への反対運動 の盛り上がりは、ベトナム反戦運動以来三十年ぶりに米国の左翼運動が復活したこと を示すものとなった。

 反対運動は、融資によって貧しい国々を救うべきIMF・世銀が、逆に貧しい国々 をいっそう貧しい状態に追い込み、先進国の多国籍企業の利益に貢献しているとし て、両組織の抜本的改革や廃止を求めている。労働組合や環境保護団体のほか、学生 組織やキリスト教会、奉仕団体などが運動に参加している。

 今回の運動は、昨年十一月末にシアトルで開かれたWTO閣僚会議への反対運動の 延長にある。シアトルでは、WTO会議に参加する各国代表の議場への入場を妨害し ようと、運動参加者は道路を封鎖した。交通妨害などの罪で警察に逮捕された人々 は、数日間滞在した留置場で房ごとに「分科会」風に討論会を行い、四月にワシント ンに再結集しようと決議した、と報じられている。

 シアトルでは約六百人のデモ参加者が逮捕されたが、逮捕者を出しながら交通妨害 を続け、マスコミの注目を集める戦略が事前に決まっていた。この戦略は、そのまま ワシントンでの反対運動に引き継がれた。警察はシアトルでの対応が遅れた教訓か ら、今回は会議の前日にワシントン市内の反対派の拠点を急襲、ここでも六百人以上 を逮捕したが、市民運動は逮捕される準備を事前に済ませていた。

▼グローバリゼーションが標的

 市民運動がWTOだけでなくIMF・世銀をも標的にしたことから分かるように、 彼らが「諸悪の根源」とみなすのは、国際機関の背後にある「グローバリゼーショ ン」の動きである。グローバリゼーションは、国際的な資金移動で日米欧の株式や為 替市場が激しく上下したり、日本や東南アジアなどへの外資系企業の進出が増えた り、インターネットの普及によって国際的な情報伝達が急増する、といったことに象 徴される。

 シアトルやワシントンに集まった市民運動は、この動きが世界の貧富格差を拡大す ると主張し、クリントン政権がこれを推進するのは、多国籍企業から企業献金を受け たからだ、と批判している。ソ連崩壊によって社会主義との冷戦に勝利した「帝国主 義」が進化したのがグローバリゼーションだ、と彼らは考えている。

▼日本にも波及するかも

 グローバリゼーションで最も利益を得たのは米国である。この動きに乗り遅れ、官 民そろって袋小路から出られない経済敗戦状態の日本からみると、勝者であるアメリ カの国民が始めた反対運動には違和感を覚える。WTOの時には、発展途上国の代表 からも「WTOは貧しい国に貢献している。市民運動は間違っている」という声明が 出された。

 とはいえ運動参加者たちは「彼らこそ、自国に援助された資金を横領した張本人 だ」と反論しており、途上国への融資の一部が為政者によって私物化されたことは、 世銀も認めている。世銀は冷戦時代、第三世界諸国を西側に引き付けるための「買収 機関」だった側面がある。

 冷戦後、世銀は新たな存在意義を模索したが、市民運動の指摘の中に使える戦略が あることを見て取り、今では機関の主目的を最貧国の救済に転換し、環境破壊型の大 規模プロジェクトを減らして地元密着型の小規模事業を増やし、多くの市民運動出身 者を雇用している。市民運動による世銀の乗っ取りは成功したわけで、シアトルやワ シントンでの運動は、この傾向を強化しようとしている。

 グローバリゼーションへの反対運動は、遺伝子組み換え作物への反対など環境保護 運動として欧州で始まり、昨年に米国へ飛び火した。今回のワシントンの運動では大 学生や高校生の参加が目立ち、米国の若者が再び政治運動に希望を見いだし始めたこ とがうかがえる。かつてのベトナム反戦運動と同様、この動きはいずれ日本にも波及 するに違いない。


【関連ウェブサイト】

 ●グローバリゼーションに反対する市民運動のサイト

 http://www.a16.org/

 ●IMF

 http://www.imf.org/