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(2000年3月7日付)
チェチェン、コソボ、オーストリアの極右政権という、ヨーロッパの三つの問題に 共通している深い意味がある。それは、三つの地域の人権侵害(オーストリアの場合 は侵害になる可能性)が、「民主主義」の結果、表れてきたということだ。
チェチェン紛争の場合、問題の根源はチェチェンが、ロシア地域と、その南にある イスラム圏コーカサス地域との間に位置し、チェチェン人自体はイスラム教徒だが、 チェチェンという地域はロシアに属している点にある。チェチェン人は、約二百年前 にロシアに併合されて以来、ロシアからの独立を希望し続けているが、ロシアはチェ チェンを自国領の一部とみなしており、欧米を中心とする国際社会も、これを支持し ている。
ロシアのプーチン首相は就任以来、一貫してチェチェン人の独立闘争を弾圧してき たが、それが残虐さを増すほど、ロシア国内でのプーチン支持は高まる傾向にある。 その背景にはロシア人の多くが、強い反ロシア精神を貫くチェチェン人を警戒してい ることがある。国際社会は、チェチェンがロシアの一部であると認める以上、ロシア の「民主主義」に基づいたチェチェン制圧の決定を、原則的には容認せざるを得な い。(一定以上の残虐行為は批判の対象にできるだろうが)
コソボの紛争もまた、似たような歴史的背景を持っている。コソボが属するバルカ ン地域は二百年ほど前まで、イスラム教徒による帝国だったオスマントルコの支配下 にあり、コソボの人々の大多数を占めるアルバニア系住民は、トルコの影響下でイス ラム教に改宗した。
バルカンではその後、オスマン帝国の弱体化によって、セルビア人などキリスト教徒 勢力が強くなり、コソボもセルビアに併合されたが、その後もアルバニア系住民は、 セルビアからの独立を希望している。
旧ユーゴスラビア解体後、独立運動を強めたコソボのアルバニア系住民を、セルビ アは厳しく弾圧した。その裏には、セルビアで民族主義が強まり、反セルビアの態度 を変えないコソボの人々への反感が、セルビア国内で煽られたことがある。扇動者の 筆頭は、大統領のミロシェビッチだが、セルビアの野党が反ミロシェビッチ運動を展 開し、アメリカがこれを支援しても、セルビア国民にはあまり支持されていない。
アメリカなどは昨年、空爆によってセルビアを「制裁」した。だが、国際社会はコ ソボをセルビアの一部であると認めており、これは内政干渉に当たる。アメリカは 「人権擁護は内政不干渉の原則よりも重視される」という新しいルールを作り、批判 をかわしたが、空爆が終わると今度はコソボのアルバニア系住民がセルビアからの独 立要求を激化させ、アメリカの介入は「人権擁護」ではなく「コソボ独立支援」にな ってしまった。
オーストリアの極右政権誕生に対する欧州議会の非難もまた、オーストリア国民の 民主的な意志決定を無視した内政干渉である。欧州議会では「オーストリア一国の民 主主義よりも、極右を嫌うヨーロッパ全体の民主的な意志の方が、より重視すべきも のだ」という新理論を作り、内政干渉を正当化した。
二十世紀初め以来、国際社会では、それまでの植民地主義を乗り越えるため「国民 国家が民主的に決めた意志は不可侵なもの」というルールを維持してきた。だが、そ れを超える新ルールが、大して民主的な議論もなされないまま、ヨーロッパで適用さ れ出している。
これが「大国のエゴ」を正当化する手段として使われないよう、注視していく必要 があるだろう。
【関連ウェブサイト】
●チェチェンについて 日本カフカスクラブ http://www.geocities.com/kafkasclub/index.html)
●コソボについて コソヴォ情勢(外務省) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hosho/cosv/index.html
●オーストリア新政権トピックス:オーストリア連立政権 http://news.yahoo.co.jp/Full_Coverage/Austria/