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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」
石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表

【20】

脱北者の子どもの韓国入り急増


(2003年11月4日付)

 韓国入りする北朝鮮住民の数がここ数年急増している。1999年312人、01年583人、02年1141人、そして今年は8月初めの段階で800人弱にのぼり、年末には1500人を超えるのは確実と見られている(数値は韓国統一部発表)。

 韓国入りする脱北者の急増に伴い、彼らの韓国社会への適応と受け入れの問題が社会問題として急浮上している。とりわけ子供たちの問題は深刻だ。昨年の韓国入りした脱北未成年者は、200人超で、うち半数以上が保護者のいない「無縁故未成年者」だ。

 脱北して来た子供たちに特徴的なのは、(1)韓国の子との著しい学力差、韓国社会との異質感による疎外意識(2)多くが家族親族と離散してしまっている(3)多くが北朝鮮国内、中国で流浪生活をしており、規律を求められる学校生活に適応しづらい、という点だ。

 シン・ヨンオクさん(13)は、飢餓の中で両親を失い、近所のお姉さんに連れられて中国に脱出、昨年8月に韓国入りを果たした。今年3月から2年遅れの小学校5年に編入したが、勉強についていけない。

 算数や理科などはまだしも、英語(韓国は小学校から英語を習う)や社会科は生まれて初めて習うことばかりなので当惑の連続だ。北朝鮮で習う社会科は、神格化された金日成・正日家族の「革命業績」を暗記することに多大な労力を費やさせる一方で、世界史の常識的な基礎についてもまったく習ったことがなかったという。

 シンさんが直面しているのは勉強の問題だけではない。北朝鮮の方言をからかわれるのはまだしも、「北朝鮮のスパイ」だといじめられたり、「北では人肉を食ってたんだろ」などと、北朝鮮民衆の困窮に無神経な言葉を投げつけられることもあるという。脱北者の子供たちの8割が学校を途中でやめたり、問題を引き起こしているのが現状だという。

 現実の南北統一はまだ先のことだが、脱北者の韓国適応の問題は、統一後の痛みと困難について、多くのことを韓国社会に予見させている。

 (石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表)