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(2003年10月21日付)
先月後半まで、中朝国境地帯に滞在し、北朝鮮の密輸屋や、脱北してきたばかりの農民、炭鉱労働者などを取材して、最新の北朝鮮事情を探った。北朝鮮の経済難、食糧難は相変わらずだが、最近の変化として驚いたのは「外部情報の流入」が想像していた以上に早い速度で進んでいることだった。
金正日政権は、放送、新聞、書籍など外国の情報を徹底的に排除してきた。友好国中国の新聞ですら持ち込み厳禁だ。ところが、取材した人たちは口を揃えて「韓国のドラマや映画をこっそりビデオで見たことがある」と証言した。
聞けば、韓国のテレビ番組を録画したものが、この1年間に中国から大量に密輸されて広範囲に出回るようになったのだという。もちろん皆がビデオ機器を持っているわけではないので、合同「鑑賞会」がたびたび開かれるという。
現在の北朝鮮は経済破綻によって、庶民たちは各々勝手に商行為をして何とか食いつないでいる状況だ。取引されるのは食糧や衣服などの消費物資が中心だったが、最近はビデオやCDなどの「情報」も、小金持ちを対象に取引されるようになったという。金になれば「商品」は何でもよい、というわけだ。
北朝鮮の水も漏らさぬ情報統制は、人間の「知りたい」という欲望と、庶民たちが生き延びるために蠢くことが結びついて、徐々に突き崩されているように思えてしかたなかった。
(石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表)