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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」
石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表

【18】

北朝鮮食糧支援を考える


(2003年10月7日付)

 10月1日に日韓の非政府組織(NGO)が記者会見を行い、北朝鮮の両江道に潜入して国際支援食糧が市場に並ぶ様子を秘密撮影した映像を公開した。計4時間に及ぶそのオリジナル映像テープを見せてもらう機会があった。

 そこには「大韓民国」「WFP(国際食糧機関)」「米国からの贈り物」と書かれた袋が見え、民衆に無償で配分することを目的とした支援食糧が、市場に横流しされている様子がはっきり捉えられていた。

 私はこれまで400人以上の脱北者に取材してきたが、彼らが口をそろえて語る「支援食糧は一部しか民衆に配られず、軍や労働党の幹部が横領して市場に卸している」という証言が、残念ながら映像証拠で裏付けられたというほかない。

 加えて私の会った脱北者たちは「それでも外国から支援食糧が市場に入ってくると値段が下がって大助かりだ」という哀しいほど切実な証言を共通して寄せてくれたことも紹介しておきたい。

 北朝鮮への食糧支援の実情は、「もっとも困難な人たちを救う」という、国際社会が望むようにはなっておらず、善意が食い物にされているのは腹立たしい限りだ。WFPと人道援助に応じている各国には、分配の透明性確保の徹底をお願いしたい。

 一方で監視が不十分なこの食糧支援が、市場の食糧の値段を下げるという形で、飢餓の緩和に有効にはたらいているのも事実だ。私は数多くの飢えた経験を持つ北朝鮮の人々と会ってきた。だからこそ、横流しに激しい怒りを感じつつも、「援助を止めよ」とは簡単に言うべきではないと思うのだ。

 要は、飢えという人間の生の根源的問題にさいなまされ続けている隣国の人々の苦痛を、いかに確実に和らげていくかということだろう。北朝鮮政府には常に厳しく強く食糧配布の透明性を要求しつつ、食糧支援は続けていくべきだと思うのだがいかがだろう。

 大切なのは「隣国で再び餓死者を出させない」という理念を明確にして、既存の援助のあり方を考え直すことだと思う。

 (石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表)