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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」
石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表

【15】

脱北者が日本に来たら……


(2003年8月5日付)

 先週、タイ・バンコクの日本大使館に脱北者10人が駆け込んだ事件は、数年前から顕在化していた食糧と自由を求めて北朝鮮を脱出する人々の問題が、依然として解決されておらず、それどころか、北朝鮮難民問題が中国、韓国のみならず、日本・東南アジア諸国を巻き込んで拡大している現実が明らかになったと言える。今後、北朝鮮難民が日本に来るようなことはあるのだろうか? 来るならどれぐらいの規模になるのだろうか?

 一部の政治家に「朝鮮有事の際には100万の北朝鮮難民が押し寄せる」などと、非常識な迷論で危機意識を煽る不届きな人もいるが、結論から言うと、有事になっても、日本に来る北朝鮮難民は最大一万人までだと私は推測している。私はこれまで中国で400人を超す北朝鮮難民に取材してきたが、彼らにほぼ共通した希望亡命先は「安全な場所ならどこにでも行くが、選べるなら韓国」なのである。

 地続きの中国や同民族の韓国とは違って、北朝鮮と日本は海を隔てているうえ、言葉も通じず縁故者もほとんどいない。それでも日本に渡りたいと積極的に考えるのは、日本に縁故がある人たち、つまりかつて日本に住んでいた元在日朝鮮人の北朝鮮帰国者たち(59〜84年の間に約9万3000人が帰国)である。

 韓国統一部によると、今年上半期に北朝鮮を脱出して韓国内に入国した人は計598人で、昨年上半期の561人に比べ約7%増加した。日本にはというと、外務省発表によると総計で約50人の脱北者が既に入国している。確かに今後、北朝鮮から日本に亡命を求めて渡ってくる人が増えるのは間違いない。北朝鮮が満足に食べられて民主的な社会になるまで、周辺国はそれを受け入れざるを得ないのだ。

 太平洋の向こうの米国議会では、先ごろ北朝鮮難民を積極的に受け入れるための法案推進に合意した。今この問題で大切なのは、危機を煽ることではなく、「日本にも大量ではないが来る」という現実を直視し、受け入れのための制度的、精神的準備を進めることだと思う。