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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」
石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表

【12】

万景峰号問題を考える


(2003年6月17日付)

 6月9日に来航を予定していた北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)号が、日本当局の監督強化の方針のため、来航を取りやめた。周知の通り、万景峰号への規制強化が叫ばれたのは、不正送金、不正輸出などの違法行為と、乗船してきた朝鮮労働党幹部による在日朝鮮総連幹部への、船内での政治指導が、日本社会に不利益をもたらす「工作」と考えられたからだ。

 一方、万景峰号の来航中止に落胆していた在日朝鮮人の存在があった。北朝鮮にいる親族肉親が気がかりでならない人たちだ。1959年から始まった帰国事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人と日本人配偶者たちにとって、日本の親族知人から送られてくる荷物やお金は、飢餓に喘ぐ北朝鮮ではまさに生命線になっている。

 今の北朝鮮では、5万円あれば一家4人が1年間何とか飢え死にすることなく暮らしていける。「日本から送金の途絶えた家は全滅ですよ」という声を、私は中国に脱北した人から何度も聞いた。拉致被害者同様、北朝鮮の民衆も独裁政権の犠牲者なのである。

 万景峰号は今月下旬にまた来航が予定されている。北朝鮮政権による不法・不正行為は厳格に取り締まる必要はあるが、圧制のもとで艱難する民衆への救いの手は、差し伸べることはしても、引っ込めてはならないと思う。北朝鮮船舶の来航に当たって、政府は「毅然」とともに「寛容」の精神を忘れないで欲しい。