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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」
石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表

【8】

イラク攻撃見つめる北朝鮮の人々


(2003年4月15日付)

 今、私は中国東北部に滞在中だ。中国でも米英軍によるイラク攻撃について、特派員報告を交えて連日詳しく伝えている。

 米英軍が圧倒的武力でバグダッドを制圧すると、「米国は次に北朝鮮をやるつもりなのか?」という質問を頻繁に受けるようになった。北朝鮮と国境を接する延辺地域の人々は、とりわけ北朝鮮情勢に敏感だ。

 バグダッド陥落が伝えられた今月9日、中国に越境してきたばかりの北朝鮮の男性と会った。イラク情勢が緊迫するに従い、北朝鮮国内では、軍事優先・国威発揚のキャンペーンが繰り返されているが、庶民たちには特に戦争への恐怖はないという。

 この越境者によるとここ3カ月間、ほとんどの企業・職場で給料は未払い、食糧配給も途絶えている。この4月からはポリコゲと呼ばれる収穫の端境期(春窮)に入った。戦争準備のための食糧備蓄と重なって一般庶民の食糧事情は急速に悪化し、人々は、96〜98年の大飢饉の再来を囁きあっているという。

 「このまま座して死ぬのも、戦争やって死ぬのも同じなんだから、一度米国と戦争やったらいいと、皆口々に言い合っています」と彼は言った。

 北朝鮮の人々が戦争を望んでいるわけではないだろう。困窮を極める暮らしがあまりに長く続いたのに、まったく解決の兆しが見えず、自暴自棄の気分が蔓延していると考えるべきだろう。北朝鮮の春はまだまだ遠そうである。