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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」
石丸次郎・アジアプレス大阪オフィス代表

【7】

つかみにくいバグダッドの実情


(2003年4月1日付)

 米英軍によるイラク攻撃がいよいよバグダッド攻防戦に入ろうとしている。兵士と民間人合わせて既に数百〜千人のイラク人と、数十人の米英軍兵士と、数人の外国人ジャーナリストが命を失った。

 イラク国内からは映像を交えて連日、膨大な現地情報が流されているが、バグダッド市民の空爆に晒される恐怖や米英軍への怒り、あるいはフセイン政権の行く末に対する思いなどが、ぴんと伝わってこないように思える。

 国際世論の動向に敏感にならざるを得ないイラク政権と米英が、ともに厳しい情報統制・取材規制を行っているためではないかと考えている。

 私の所属するアジアプレスからも綿井健陽が連日、バグダッドから現地リポートを送ってきている。3月25日以降の空襲は実に凄まじいようで、衛星電話で現況を伝えて来る綿井の声も日を追うごとにうわずって来た。

 外国人ジャーナリストたちは、市内中心部を流れるチグリス川を挟んで北側にまとまって滞在している。猛爆を受けているのは川の南側に並ぶ政府関連施設で、ホテルからは2キロしか離れていない。ミサイルが着弾するたびにホテルの壁が爆風や爆音で振動しているのが伝わってくる近さだ。

 ミサイルの破壊力の凄まじさはわかるのだが、その猛爆の下に住む人のことが、よく伝わってこない。バグダッドでは外国人ジャーナリストには自由な取材は一切認められておらず、日中にイラク情報省主催の「バスツアー」で空爆跡地に案内されるだけだという。「部屋に戻るとそこは奇妙な安全地帯なんです」綿井は言う。

 2キロ先の激しい空爆を肉眼で確認しながらも、ジャーナリストが集中しているホテル一帯は、情報省の建物がそばにあるにもかかわらず、米英軍の最新兵器のターゲットにされることは今のところないのだ。

 「核心地域に入りながら、『空爆される側』に立った取材ができないんです」

 もどかしげな綿井の取材が続いている。