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アジアの潮流

連載コラム
「アジアの潮流」

【19】


バリ島爆弾テロ事件に見る社会の闇

(2002年10月22日付)

 バリ島で起きた爆弾テロ事件はこの社会の闇の深さを感じさせ、不気味である。バリ島には私も20年近く通い続けており、事件の起きた前の週もバリ島に滞在していた。事件の現場付近は馴染みの場所であり、まさかこのようなリゾート地が無差別テロの舞台になるとは夢にも思っていなかった。誰でもどこでもテロの標的になりうるという意味でこの事件の衝撃は大きい。

 今回はアルカイダと連携するテロ組織「ジェマー・イスラミア(JI)」が関与しているとみられ、当局はそのインドネシア人指導者を逮捕した。ただJIの単独犯行と断定するには早すぎる。インドネシアではテロ事件は日常的に発生しており、その背後にいつも国軍の影が見え隠れしている。

 イスラム急進派や民兵を利用して騒乱を引き起こし、それにより国軍の権益の確保を図るという筋書きである。国軍関与説とは別にスハルト元大統領の残存勢力の仕業であるという指摘もあり、事件の背景には複雑なインドネシアの国情が透けて見える。また今回のテロではオーストラリア人の犠牲者が多いことから、インドネシア人の間に根強く残る反オーストラリア感情が作用している可能性もある。

 先週はフィリピンのマニラでデパートやバスを狙った連続爆破事件が起き、10人が死亡した。これもアルカイダと関係のあるイスラム組織の犯行と見られる。私の経験から言えば、テロの原因はたんに宗教や政治体制の問題ではない。テロの根っこには必ず政治の腐敗や貧困がある。その土壌を改善することなしに、テロの根絶は難しい。

(野中章弘・アジアプレス代表)