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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」

【20】

北朝鮮にロシア正教の大聖堂
現実主義外交のシンボルとなるか


(2004年11月9日付)

 共産主義以外のイデオロギーや宗教を一切認めないはずの北朝鮮の首都ピョンヤンの中心街に、キリスト教ロシア正教の大聖堂が10月末、お目見えしたという。「北朝鮮ロシア正教委員会」のホ・ズインイル委員長がロシアのイタル・タス通信とのインタビューで明らかにした。

 特定の宗教を信じていることが当局にわかれば、政治犯として直ちに刑務所行きとなる北朝鮮。そこに「北朝鮮ロシア正教委員会」などという団体があるのか、眉唾ものではあるが、ロシアの通信社の取材に堂々と応じているのだからあるのだろう。その委員会が金正日総書記より200万ドルを提供され、大聖堂を建立したというのだ。

 「同聖堂は金正日総書記がロシアとロシア人民への友好の印として造られた」(ホ委員長)と言っているところをみると、財政難に苦しむ北朝鮮としては、ロシアに恩を売るためか、あるいはすでに支援を得たことに対するお返しとして、主義主張をかなぐり捨てて、この大聖堂を建てたようだ。

 原理原則を曲げない北朝鮮も、いよいよカネと食糧のためにはなんでもするということを示す好例が、この大聖堂ではないだろうか。今後、大聖堂では、ロシアから派遣された神父数人が毎日行うミサで金正日総書記の安寧のために祈りを捧げるという。

 北朝鮮ウオッチャーによれば、金正日総書記の決断にはやはり裏があった。総書記が2002年ロシア極東地区を訪問した際に大聖堂建設構想は生まれたという。このとき行われたプーチン・金会談でロシア側は緊急食糧支援のほか、秘密裏にシベリアから北朝鮮への新規パイプライン敷設を提案した。

 エネルギー枯渇状態の北朝鮮にとっては、まさにのどから手の出るほど欲しかったのが石油。「金正日はうれしさのあまり、プーチンの手を握り締め、御礼になにを?」(米北朝鮮問題専門家)と質したのに対し、プーチン大統領は「それでは」と、この大聖堂建設構想をほのめかし、金正日総書記は直ちに承諾したというのだ。

 プーチン大統領の意図がどのへんにあるのかは定かではない。ピョンヤンにそびえる大聖堂。北朝鮮の現実主義のシンボルになるのか。米大統領選挙後の北朝鮮の出方を占う上でも興味深い北朝鮮のジェスチャーではある。

 (高濱賛・在米ジャーナリスト)