【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2004 by The Seikyo Shimbun.



新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」

【14】

対中武器輸出めぐり米欧間で確執
日台韓も重大関心


(2004年8月3日付)

 イラク戦争をめぐってのアメリカと独仏の対立が、今度は対中武器禁輸をめぐる確執に転じている。対中武器禁輸とは1989年の天安門事件を受けて欧米などが中国の人権抑圧に抗議、一切の対中武器輸出を禁じてきた措置だ。それを独仏が解除してもいいと言い出したのだ。

 口火を切ったのは、昨年12月に中国を訪問したシュレーダー独首相。それと前後してシラク仏大統領も「もうそろそろ解除してもいい」と言い出し、その他EU諸国もこれに追従する構えを見せ始めた。さる5月、欧州諸国を歴訪した中国首相は独仏首脳にだめを押し、解除はまさに時間の問題になってきている。

 これに激怒したのがアメリカだ。国務省スポークスマンは6月1日、「米国政府は欧州諸国の対中武器禁輸解除の動きに度々、憂慮を表明してきた。解除は極東地域の安定に不確定要因を与えるだけでなく、引き続き行われている中国の人権抑圧に対し誤ったシグナルを送ることになる」とのコメントを出した。

 独仏の解除の意図はなにか。元国防総省高官で米シンクタンク、ハリテージ財団のピーター・ブルックス主任研究員は(1)最新鋭の軍事技術や武器を売ってやることでその見返りとしてエアバス売り込みや高速鉄道建設受注を狙っている(2)ポスト冷戦期に出来つつあるパックス・アメリカーナ(米単独世界制覇)に対抗、中国の軍事強化を助けることでバランス・オブ・パワーを築こうとしている――と指摘している。

 売るとすれば、仏には最新鋭のミラージュ戦闘機やEUが進める衛星利用測位システム(GPS)がある。また「ガリレオ」計画の開発投資への中国参加といったことも考えられる。

 その結果、「将来的には中国は、台湾・日本・韓国防衛の任務を帯びている極東米軍に対する攻撃能力を著しく向上させることは必至」とブルックス研究員は恐れている。

 「独仏にとって極東は遠い彼方だが、日米台韓にとっては死活的」と続ける同研究員。アメリカと独仏の関係は、確かに不確定さを孕んでいる。そのことだけは頭の片隅に置いておいた方がよさそうだ。

 (高濱賛・在米ジャーナリスト)