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新アジアの潮流

連載コラム
「新アジアの潮流」

【10】

通商法301条ちらつかせるケリー氏


(2004年5月18日付)

 ブッシュ政権が今後また4年も続けば世界はどうなるのか、という不安がアメリカ人一般大衆の間にも広がっている。その分、相対的にケリー民主党大統領候補への期待が高まっている。よほどのハードコア(強固)な共和党員でもない限り、米一般大衆は「これ以上ブッシュにはついていけない」といった感じなのだ。

 その証拠に、イラク刑務所での虐待事件もあってか、各種世論調査ではケリー氏が数ポイント差でブッシュ氏をリードしている。米世論調査会社社長のJ・ゾグビー氏などは、早くもケリー当選を予想している。理由は「再選を目指す現職大統領としては支持率が低すぎる」からだそうだ。

 イラク占領政策の失敗だけではない。経済でもブッシュ再選には赤信号が点滅している。12日に米商務省が発表した3月の米貿易赤字は459億5800万ドルと前年より9・1%増え、単月の赤字としては過去最大となった。国別の収支をみると、中国との貿易赤字は104億3500万ドル、(前月比26%増)、対日も67億3700万ドル(同11・3%)となった。

 ケリー氏は、4月27日のウエストバージニア州での集会では、「アメリカ人の雇用が危険にさらされている時に、外国による貿易違反行為に目をつぶっているわけにはいかない」として、中国が引き続き人民元の切り上げを拒みつづけるのであれば、通商法301条発動も含む対抗措置をとらざるをえないと言い切った。

 上院議員としては保護主義に反対する自由貿易支持者だったケリー氏だが、雇用問題を絡ませた民主党主要支持基盤の労組からの要求はのまざるをえない。それどころか大統領選挙の最大の、マニフェスト(公約)になりつつある。

 「米国と中国の間は製品構成に補完性が高く、本来は摩擦になりにくいはずだが、双方のイデオロギーの違いから経済問題は直ちに政治的色彩を帯びる」(L・ヘルム・ワシントン大学国際問題研究所主任研究員)

 むろんターゲットは中国なのだが、ケリー氏の頭の片隅には日本もちらついている。「ケリー大統領」登場で感情的には、すっきりするかもしれないが、通商・経済では再び「米中・日米摩擦」が起こりうる。そんな予感がする。

 (高濱賛・在米ジャーナリスト)