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(2001年5月1日付)
株と聞けば、日本の社会ではたいてい胡散臭いもの、というイメージではないだろうか。不透明な取引や、不十分な情報開示から、いずれにしても庶民からは無縁の存在と見られている。
その評価、すなわち株価を測る代表的なものさしは、企業の業績(儲け)である。だが、利益の最大化だけによらない株式投資が今、ヨーロッパを発祥として、香港やシンガポールにも広まりつつある。「サステナブル投資」と呼ばれる尺度である。
ごく簡単に説明すれば、株式投資をする際に、企業の儲けに加えて、社会的適合性(従業員との関係など)や環境適合性(環境にやさしい)をも、企業評価の対象に入れようという試みである。利益の極大化という経済的合理性と倫理的価値の双方を組み合わせた投資尺度と考えればよい。
元々は、ドイツの教会から委託された資産運用に当たって、倫理的な投資基準を設けるところから始まった。今では、グローバリゼーションの権化でもある多国籍企業の行動に対する倫理的な縛りとして、欧州を中心に一般投資家の間にも浸透しはじめている。
背後にあるのは、急激なグロバリーゼーションに対するソフトパワーによる対抗である。経済合理性に基づいた「儲け」に加えて、文化や生活環境を重んじたアイデンティティの確保も大切にする新しい投資尺度と形容できよう。
ここまでくると、勘のよい読者は、この連載の第1回で紹介した、アジア人として初のノーベル経済学賞を受賞したケンブリッジ大学教授のアマティア・センに思いを馳せるだろう。
経済合理性に倫理基準を組み込んだ同教授の経済理論は、形を変えて株式市場にも登場しはじめている。
(西田実仁・ジャーナリスト)